らいちシリーズ四作目。事件も地味で展開もアナコンダに巻き付かれても平気だし、飛ぶ蛇はちょっと邪道かもと思っていたがラスト10ページからマジか!!!!!!。もうトリックを通り越して作者の発想に唖然とするばかり。「こんなことありえない」を「論理的にはありえるだろう」という形に昇華してしまう才能に脱帽。毒蛇の知識も得られるしなかなかの佳作だった。

★★★☆☆

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「援交探偵」上木らいちの「お客様」藍川刑事は「二匹の蛇」の夢を物心付いた時から見続けていた。一歳の頃、自宅で二匹の蛇に襲われたのが由来のようだと藍川が話したところ、らいちにそのエピソードの矛盾点を指摘される。両親が何かを隠している?意を決して実家に向かった藍川は、両親から蛇にまつわる二つの密室事件を告白された。それが「蛇の夢」へと繋がるのか。らいちも怯む(!?)驚天動地の真相とは?

弁理士になった知り合いもいるし、製薬会社勤務の知り合いもいるということで、結構興味深く読めた。 

筋は薬品会社の主力製品がドイツの製薬会社から特許侵害で訴えられ、主人公が密命を帯びてドイツに飛びタイトルの作戦を決行する。特許戦争ミステリー。著者は製薬会社に20年勤務した後、特許事務所を20年に渡って経営していて、その40年の経験がこの小説の基になっているのでリアリティーばっちり。ミュンヘン、アムステルダム、パリ、ロンドンと舞台も次々に展開し、どんでん返しも待っている。「無効審判」「プライヤー・アート」など特許争いに関する基本的知識を得られるが、ああやっぱこの人か!というのが最後にきてしまったのと、殺人のような生々しさが無いミステリーとしてはいいと思うが、何かきわどいスリルが無かったのがちょっと引っかかった。

★★★★☆

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青野薬品の主力製品『セファドチン』がドイツの製薬会社から特許侵害で訴えられた。総額5千億円を超える賠償金…特許をつぶす先行文献(プライヤー・アート)を見つけるため単身欧州に飛んだ藤城誠を待ち受ける運命とは?元江戸川乱歩賞最終候補作家が日本と欧州を舞台に壮大なスケールで描くサスペンス・ミステリー。そして絶句する戦慄のどんでん返し!

 

「共謀罪」が盛り込まれた組織的犯罪処罰法改正案が成立しようとしている今こそ読んでおきたい一冊。

平和警察と呼ばれる組織が「危険人物」と思われる人間を捕らえ、拷問の上、自白させる。そのほとんどが冤罪であるのに、大衆の前で斬首処刑するという、まさかの設定。凄く怖い話でちょっと引くが、伊坂さんの話ならきっと庶民的なヒーローが出てくるはずと、人間の残酷性や身勝手さだけがくっきり浮き彫りになる部分も我慢。そして現れる正義の味方!?一体、どうなっちゃうの?ということで一気読み。

正義の味方「大森鴎外君」と真壁の対決かと思いきや、えっ、その二人が死んでしまったわけ!と驚かされ、ほんとのヒーローがまさかの・・・・。

にしてもこんな世界が「普通」になったら絶対嫌だ。

★★★★★

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住人が相互に監視し、密告する。危険人物とされた人間はギロチンにかけられる―身に覚えがなくとも。交代制の「安全地区」と、そこに配置される「平和警察」。この制度が出来て以降、犯罪件数が減っているというが…。今年安全地区に選ばれた仙台でも、危険人物とされた人間が、ついに刑に処された。こんな暴挙が許されるのか?そのとき!全身黒ずくめで、謎の武器を操る「正義の味方」が、平和警察の前に立ちはだかる!

なんかジンワリ・ホンワカ・スッキリしたいときは、「東京バンドワゴン」シリーズが最適。

特に疲れている時には、イイジャンイイジャン仕事があるだけで、家族がいるだけで!という気分になれる。

★★★★☆

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老舗古書店“東亰バンドワゴン”を営む堀田家に、まさかの幽霊騒ぎが持ち上がる。夜中に棚から本が落ち、白い影が目撃されて、みんなドキドキ。我南人たちがつきとめた、騒動の意外な真相とは?さらに、貴重な古文書を巡って招かれざる客が来訪。それが思わぬトラブルへと発展して…。下町の大家族が店に舞い込む謎を解決する人気シリーズ、第10弾!!

どれもそれなりに面白かった。

特に井伊直政はちょうど今年の直虎と昨年の真田丸をつなぐ時期のものなので時間軸も良く分かって興味深く読めた。

妻籠めはいわゆる芥川賞系なので僕には少しフィットしないところがあるがそこは我慢。

こんにちはレモンちゃんはとにかく気持ち悪い。癖になるかというとそれはナイ。無理だ。

1週間でサラリと読める。

ロードノベルの面白さと、神様や神社の蘊蓄が味わえた。主人公のみのると紡さん、ほのかの3人が神社を巡って日本一周する話だが、それぞれに訳あり、その訳が気になるが、それよりも神社についても記載が満載。神社の云われは初めて知ることも多かった。

神様の系譜はとにかく複雑だが、有名どころの話はやはり面白い。イザナギ・イザナミのくだりが一番面白かった。

神社がコンビニの数より多いというのは確かにそうかも。

紡さんの「訳」にはちょっと泣けた。

★★★☆☆

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神様って何なんだ?全国の神社とコンビニを巡るうち、閉じこめた感情が溢れだす。笑いあり涙あり、訳アリ3人組の青春ロードノベル!

割と厚い本だったけど会話部分が多いせいか余白も多くすぐに読み切った。

こんなヤツそうそういないと思いながらも自分の中にいる気もしてぞっとする。

娯楽性に富んでいて何か実になるとか心に残るとかは無いけどもとにかく面白い。読者に嫌悪感を抱かせる人物を書かせたら右に出るものはいないかも知れない。

そういう意味でこの作者の想像力はスゴイ。ただし読後の爽快感や「なるほど」感は皆無。

★★★☆☆

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15歳の女子高生・本庄沙耶の父は自己中心で小狡く、母はまるで父の奴隷だ。その両親が突然家に侵入してきた男に刃物で惨殺された。さらに、一人になった沙耶が身を寄せた親戚―10年前に幼い弟を不注意で溺死させた祖父母、沙耶をレイプしようとした従兄、それを見て見ぬふりする叔父も次々と死亡する。ネット上では沙耶を励ますスレッドも立つが次第に「疫病神」「死神」と揶揄する声も囁かれる。不可解な死の連鎖の中心に身を置く沙耶。果たして彼女は“悲劇の天使”か“美しき死神”か?それとも…。

 

これは肩が凝らずに読めて読後感が爽やか!仕事の疲れも吹っ飛ぶ。

内容はドーピングの疑いをかけられ、プロ野球選手をクビになった男(しかも妻と離婚してさみしい独り暮らし)が、暴力事件を起こして活動停止になった相撲部員たちを率いて野球に挑戦することになり、甲子園まで行っちゃうという、とんでもない内容。だからこそなのか、滅茶苦茶面白くて一気読み。9人の部員と女子マネ(実の娘)、このやり取りと大食漢の彼らの食事シーンだけでも面白く、ドーピングの謎ときもいったい誰が?。校長先生か?えっそうきたか!という展開も楽しめた。野球に詳しくなくても(日本人男子にそんな人はいないと思うけど)楽しく読めると思うし、エピローグがまた良かった。

★★★★★

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プロ野球選手だった小尾は、身に覚えのないドーピング疑惑で球界を追われる。それから3年が経ち、家族とも別れ私立高校の臨時体育教員として働く小尾は、校長から突然の呼び出しを受け、野球部の監督就任を要請される。だがその野球部は、不祥事を起こして無期限の活動停止になった相撲部の部員を転籍させて創られたものだった…。挫折からの再起を図る中年男が、並外れた体重と食欲を持つが、野球は素人のぽっちゃり男子たちと甲子園を目指す!

 

明治安田生命のカレンダーが今年はフェルメールなんです。

ちなみに3月・4月がガードナー美術館から盗まれた「合奏」

部屋にあるのでシゲシゲ眺めてみた。といった因縁もありつつ、これは凄く中身が濃くて、久々に「読書」した感満載。

学生運動・絵画贋作問題・バブル時代の日本・中堅商社の内実などなどどれをとってもリアルな書きぶりで引き込まれた。

主人公の生きた時代と思い出を辿りつつ、清張とフェルメールを重ねて描き 作中に清張が扱われる事もあるが、清張については批判的に描かれている。

派手に盛り上げるのではなく、静かに丹念に事件を描き出し、淡々としてはいるが、絵画への興味も引き出してくれた作品。今年に入って初の5つ星!

★★★★★ 

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昭和四十年のアムステルダム運河バラバラ殺人事件から二十年以上経過して、私はアムステルダムへ駐在することとなった。そこで知る松本清張氏が記した『アムステルダム運河殺人事件』の謎、先輩の「死」の真相とフェルメールの贋作、そしてM子。歳月を経てすべてが繋がった。それはまさに「詭計」と呼ぶべきものだった―。島田荘司選・第8回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。

 

この作家の作品は似た感じなので「あれっ、これ前読んだかも」と一瞬思うがそんなことはない。これも警察とパチンコ業界、警察と政界の関係、さらには圧倒的で魅力的な暴力カリスマの存在。確かにデジャブ感満載だが、面白くて一気読み。

大小関わらず誰しも経験のある後悔。その後悔が、人の死に関わってしまうものなので小説になる。私利私欲にまみれた政治の世界をまあそんなことはあるまいと思いながらも、そういうこともあるんじゃないと垣間見せてくれる。

常に冷静な感じの元SPの主人公の小津だが、亡き妻の残したレシピを再現するために料理教室に通ったり、警察官時代の上司がパチンコ屋でも上司で頭が上がらなかったりという部分もあるが、僕にはもっともっと「大崎」秘書を掘り下げて欲しかったかな。

★★★☆☆

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電話一本、メール一本入れていたら…。
もうひと言、声を掛けていたら…。多忙な日々に流されてしまって…。
大切な人を亡くした二人の男、大志を閉ざした男、後悔を秘めた三人の男たちがいま、出逢う。