マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画である。
トランプが勝利宣言をした2016年11月9日にちなみ、大ヒット作「華氏911」をかけた作品名である。
トランプの勝利を予言したムーアの基礎資料が映画となっている。
それを使って2018年11月の中間選挙での共和党への打撃を狙った。その成果が出たのかどうか、上院は共和党が引き続き多数を占拠し、下院は民主党がひっくり返して多数を占めた。
この作品は、トランプが勝利した原因の分析である。
それは第一に産業構造が変化し、ラストベルトと呼ばれる広大な労働者階級の地域が共和党によって打ち捨てられ、民主党によって救いの手を伸ばされず、甘い言葉でアメリカ魂をくすぐるトランプを支持するか棄権するに任せたこと、
第二に民主党の上層部も支配層の一員であり、自党の人権派サンダースや多様な勢力を抑え込んでいること、
第三に民主党の代表選びの選挙方式が、真の多数決でなく、重鎮による特別代議員制で持って、多数のサンダースではなく少数のクリントンを候補者に祭り上げたこと、
第四に大統領任期中のオバマがミシガン州フリントで犯した茶番的誤り(鉛汚染した水道水を放置し垂れ流した共和党知事を、オバマが招かれた大集会の席で水道水を飲んで見せて免罪した。前の日に談合が行われていた)の影響の広がり
などである。
結論としていまのアメリカはヒトラー台頭時のドイツに似ていると警告している。
しかしまたこの作品はアメリカの希望も明確に打ち出している。
銃規制に立ち上がった全米の高校生たち、多様な出身階層の下院議員候補(多くは女性)が現れていること、ウエストバージニアの教員ストと成果、その他州への広がりなどの克明かつリアルな描写である。
アメリカ国民はこの映画を見るべきだし、日本人も他人事と思わず観て欲しいと願う。
斎藤浩