私っておせっかいかな、と『ひとがた流し』を見たshちゃんが言うので、読んでみた。

ひとがた流し/北村 薫

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 「いい、あなた、倒れてる人の財布を抜こうとしてるんじゃないのよ。人にはね、付け込んで欲しい時だってあるのよ」


 私のことをよく知ってる人がつけこんでくれるとしたら、それはすごくしみじみうれしいことではないかと思う。


 「...もし、お前の側に、そういう人がいるんなら、気楽に慰めたりしちゃいけない。そういうことは、本当に心の通じ合った人間にしかできない。言葉がどうこうじゃないよ。気持ちが重なっていたら、そこにいるだけで力になれるもんだよ」


 慰めることと力になることはけっこう正反対な気がする。
 このことで私には、力になってくれる人がすごくたくさんいたけれど、慰められたことはない、と思う。

 やっぱりどう考えてもshちゃんはおせっかいなんかじゃない。


 knhちゃんとは何度か一緒におふろに入ったけど、やっと今回気づいたみたい。

 alchemistちゃん、おっぱいが一個しかなーい!

 おしりかじり虫がまちがって食べちゃったんだよ。

 じゃあ、knhちゃんが神さまにお願いしてあげる。

 なんてお願いしてくれるの?

 alchemistちゃんはおっぱいが一個しかありません!


 それってお願いにはなってない気がするけど、でもknhちゃんありがとう。

 自分とは基本的にものごとに対する考え方や姿勢が違う人というのはいるものだし、気の合う人とだけ仕事ができるわけじゃないんだからお互いに認め合っていかないと、というのは分かってるつもりだけれど。。。

 「進行がんを告知されて間もない人が泣いてしまった」という申し送りに続いて、「泣きたいのはこっちです」。

 思わずどなりそうになってしまった。
 「それなら看護師やめれば?」と言いたくなる気持ちをなんとか抑えた。
 がんであることはやめられないんだっつーのむかっ
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 死を拒むことで生を手放そうとしている、と思えていたいけど。。。

 生を楽しもうとすればするほどこれがずっと続けばいいなあと思ってしまう凡人なので、クモはかっこよくないけどかわいかった。

 「生きていたい、と言ったのは死にたくない、というくらいの意味だったんじゃないかな」と言われていた人が少し前にいた。
 死ぬのは、生きていなくなる、ということだけではない。
 死というものに精神的にも肉体的にも苦しめられずに死ねる人なんてほとんどいないんじゃないだろうか。
 まだまだ楽しいから死にたくない!とは思っていても、そういう苦しみには堂々と立ち向かえるようになれる日がくるといいなあ。。。
 暴言を吐く患者さんというのはけっこういるものだけれど、
あまりに暴言を吐かれ、それが退院のめどが立たない患者さんで、
なのに私は最近改めてこの仕事が好きだなあと思ったところだったので、
それなのに咳が止まらず、もしかしてそう長く仕事を続けることはできないのでは、と思ったりしていたので、
いつまで暴言を吐かれ続けるのか果てしないことのように思えて、看護師になって以来初めて人前で泣いてしまった。

 修行が必要だなあ。
  咳が止まらないので、人に心配されるだけでなく自分もいいかげん心配になり、先生に相談してみることにした。

 相談して、検査してもらって、そしてどうするつもりなんだろう、と考えてみた。
 やっぱり私は、自分自身の人生に関する限り、PS0以外の人生に興味はない。
 そしてもしかしたら、「生きたい」わけではなく「死にたくない」だけなのかもしれない、と思う。
 でも、そんなふうに考えることがどれほど失礼なことか、ということには簡単に思い当たるくらいに恵まれた人生を歩んでいる。
 だから検査して何かがみつかっても、当然治療してもらう、という選択肢を選べるようでいたい、と思う。

クローバークローバークローバークローバークローバークローバー

 そしてそれはそれとして、
「何か薬いる?リンコデとか。」
 という先生の言葉に、お菓子を買ってあげると言われた子どものような気分になり、リンコデを試してみることにした。
 「病棟好き?」
とある日ryt先生に聞かれ。。。

 何かと思ったら、通院治療センターに来ない?というお誘いだった。

 確かに抗がん剤をする患者さんが入院すると、思い入れ度がだいぶちがう。
 私にも気持ちが分かるかもしれない、と思うから。

 でも、通院治療センターへ行くかも、と考えてみると、今の病棟にはあって通院治療センターにはないもので私が好きなもの、というのがけっこう多そうなことに気づいた。
 そして何よりも、今の私は通院治療センターの患者さんを、自分の気持ちのはきどころに使ってしまうのではないかと思う。
 決して共感ではなく。

岩手県に約400万円賠償命令 医師過失で乳房切除

記事:共同通信社
提供:共同通信社

【2007年10月15日】


 岩手県遠野市の女性(46)が県立中央病院(盛岡市)で乳がんと誤診され、不要な乳房切除で苦痛を受けたとして、県に約821万円の損害賠償を求めた訴訟で、盛岡地裁は12日、約396万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 榎戸道也(えのきど・みちなり)裁判長は「医師が注意義務を尽くして検査をしていればがんと診断することも手術実施もなかった」と病院の過失を認定した。

 判決によると、女性は2001年9月、乳房のしこりを感じ、別の病院で乳がんの疑いがあると診断されて県立中央病院を紹介された。医師は乳がんと診断し、左乳房の4分の1を切除した。後の病理診断で摘出した腫瘍(しゅよう)は悪性ではなかった。

 県医療局は「主張が認めてもらえず残念。内容を十分検討して対応を決めたい」としている。


 もし私の乳がんが今になって誤診だったと言われたとしたら。。。

 必要もないのに胸を切られた人の悲しみが分からない、ということではなく、それでもやっぱりうれしいのだろうと思う。
切ってしまったものはもうもどってこなくても、それでもやっぱりうれしいのだろうと思う。
 
 となりのおばあちゃんが、老人会の温泉旅行から帰ってきた。
 おみやげは地獄谷の温泉卵。

 「1個食べると1年長生き、2個食べると2年長生き、3個食べると死ぬまで長生きするんだって。」

 2個くれたかと思ったら、3個入っていた。
 死ぬまでちゃんと生きよう。
 小学生の頃、紙がもったいないからと落書きは裏紙にしていたけれど、ときどき自由帳の真っ白な紙に描くのは楽しかった。

 どちらかといえば履歴書負けするくらいだったのに、基本の健康状態を良好と書けなくなってしまったんじゃないかとあがいていた。
 そしてこの間、私のこの一見ばらばらな行き方をつなげているものを言葉にするヒントをくれるんじゃないかという場所をみつけてしまい、私の中で履歴書問題はより切実になったので、注射のときに聞いてみた。

 「私みたいな人が履歴書に健康状態良好って書いたらうそですか。」

 「そんなことないんじゃない?」

 あまりにもすんなりと本気っぽく先生が言ってくれたので、気が抜けてしまった。

 これが釣書だったり健康診断書だったりしたらそういうわけにもいかないのはわかってはいるけれど、それでも心が舞い上がってしまった。