出発前日になって乗り合いタクシーなるものの存在を教えてもらい、時間の余裕をもって帰れるめどがたった。
 
 うかれて「今日から夏休みなのー。」と認知症のおじいさんに言ってみたら「学生さん?」と聞かれ、自分の恵まれた環境を再認識。
 「どじしないようにねー。」と見送られて仕事終了。

 そして初めての乗り合いタクシーは、なんだかとっても快適。
 車を置かせてもらえて、空港まで直行。
 車内も足をのばしてゆったり。
 バスの営業所から乗ることになったので、ローカルバスの運行を管理しているらしいおじさんの仕事をのぞくことができてしまった。
 机の上には路線図が描かれ、マイクで通信しながら、番号のついたプラスチックのブロックを机の上であちこち動かしている。
 この仕事も、新人さんがひとりだちするまで時間かかりそうだなあ。
 そして、やっぱり自分は日本の田舎のことはまだまだよく知らないのだなあと思う。

 6時間かかるようなことを言われたのだけれど、3時間半でセントレア空港に到着。
 旅は事前にあれこれ調べて空想することで倍楽しめる、と思っているので、セントレア空港の設備もチェックずみ。
 なんと展望風呂があるのだ。
 もちろんおふろへ直行。
 そりゃあお湯は薬臭い。
 でも、空港のおふろにはそれなりの楽しみがある。
 鍵がすごくハイテクだったり、飛行機を眺めながらお湯に浸かったり。
 飛行機を見ていたら、タイより遠くへ行くのはほぼ13年ぶりだということに気づいた。

 いつもは夜中から徘徊するおばあさんがあまりによく眠っているので生きているのか心配になり、懐中電灯でじーっと照らしてしまったような仕事が明けての16時間飛行。
 そんな在り方を私はめざしていたんだなあということを思い出す。
 
 バックパックをしょって空港内を歩いていると、どうしてもれひさんのことを考えてしまう。
 よくブログに、アフリカの写真を載せてくれていたからだろうか。
 ほんとうはまだそんなふうに旅がしたかったんだろうなと思うからだろうか。

 どんなに痛くても苦しくても、れひさんのように前向きな人は、まだまだ生かされるような気がしていた。
 看護師なのにばかみたい。

 れひさんに会っておけばよかった、と思うと同時に、裏ブログなんか始めなければ、こんなふうに死んでしまう人と出会わずにすんだのに、とも思う。
 それでもひとつほんとうなのは、れひさん、れひさんはこんなブログでしか知らない、これから待望の夏休みをすごそうとしてる遠くの人の心の中にも、確実に残ってるよ。

 いつか私が旅立つとき、私もれひさんみたいにたくさんの人の心の中に残れるよう大切に、楽しくこの夏休みをすごそうと思う。
 夜勤を終え、もうすぐ夏休みなので浮かれながらカルテに記録していたら、横にいた薬剤師さんに言われた。

 alchemistさんって楽しそうだね。

 そして気づいた。
 私ってば、意外に毎日楽しい。

アクロポリスの木

 こんなことになって、もうちょっと沈むかと思ったこの1年、暗くなったり、人を羨んだりすることがなかったわけではもちろんないけれど、気づいてみたら、これがいつまでも続くってわけじゃないんだよ、という切迫感(というほど緊迫したものでもないけど)の中で、こんな私でもぴぴっと、今を生かすみたいなことができるようになってきた気がする。

 みんなに感謝だなあ。


 久しぶりにれひさんのブログの更新があったので、さっそくひらいてみた。
 いつか目にすることにはなるだろうけど、まだもうちょっとは先だと思っていた記事だった。

 たったの4年間に亡くなる人はたくさん見てきたけれど、仕事ではなく自分が選んで知り合いになった人の死がこんなに悲しいなんて思わず、悲しくなっている自分に気づかず、何度も何度も、れひさんのブログを開けたり閉めたりしてしまった。

 れひさんの状況が厳しくなっていくにつれ、同じように厳しい状況におかれている病棟の患者さんたちの現状を見ているだけに、れひさんのあきらめないひたむきさに返す言葉がみつからず、傲慢にもそんなれひさんをそのままにしておいていいのかとすら思ったこともあり、ずっと長い間ブログにもコメントできないままだった。

 でも、きっとちがうのだ。
 れひさんのあのひたむきさは、現実逃避ではないのだ。
 現実がどうであれ、自分の希望を思い描かなければ、ただ流されていくだけになってしまう。
 特にれひさんのように、すごい速さで生きぬいていってしまう人には。

 れひさんのブログが、れひさん自身によって更新されることはもうない。
 毎日の日課のようにしていた、れひさんのブログをチェックするということがなくなろうとしてみて思う。
 悲しいことやつらいことだって、生きていればこそなのだ。
 だから、ぱっとしない一日でも、大切にしていきたいと思う。

 れひさん、どうもありがとう。
 夜勤前だというのについついホテルルワンダなんかを見てしまったら眠れなくなり、
MacBookで比嘉栄昇さんのアルバムなんか聞きながらごろごろしてたら、
iPhotoに入れてある写真がランダムに選ばれて出てくるように設定してあるスクリーンセイバーに、
ほりぐち農園のみなさんと釣りに行ったときの写真が出てきていて、
なのにこれから夜勤だよ。。。と思ったら、
頭の中がごしゃごしゃになってよけいに眠れなくなってしまったショック!
 遊ぶ用事があると、なぜかその前の時間も有意義にすごせてしまう。
 夕方から花火大会なので、掃除も勉強もひととおりできてしまった。

花火(みどり)


 実はみんな浴衣で行くつもりはなかったということは事前に判明していたのだけど、
すっかり浴衣で行く気になっていたので、ひとりで浴衣を着ていくことにする。
 やりたいことはやっておく心がまえを、もうやりたいこといろいろやっちゃったんじゃない?とかみさまに誤解されたらどうしよう。
 前回の教訓を生かして、腰にはタオルを巻き、コーリンベルトも装着。
 
 お世話になるkshrさんにロールケーキを買いに行く。
 この間よりはきちんと着られているような気がするもののまったく自信がないので、なんだかこそこそと買ってしまった。
 ついでにひまわりの花束も。

花火(ピンク)

 湖近くの住宅街の中は、ひっそりと花火大会前の夕暮れの雰囲気が出ていた。
 大騒ぎするわけでもないのだけど、なんだか家の前に人がうろうろしていたり、ところどころの家で庭に席が用意してあったり。
 kshrさんちのおばあちゃんも、家の前をうろうろして待っていてくれた。

 久しぶりにお会いするkshrさんは、家の中で車いすにのって待っていてくれた。
 家の中に堂々と車いすがある雰囲気、学生の頃の訪問看護実習以来だけど、やっぱりいいなあと思う。
 私たちも堂々とロールケーキをkshrさんへのおみやげにしちゃったりして。

スターマイン
 
 ごはんの間もおばあちゃんはしゃべりっぱなし。
 来ちゃってやっぱりよかったかな、としっかり思わせてもらえるくらいに。

 なんと船に乗って花火を見せてもらえることになった。
 小雨が降りだしたので、畑用の透明のシートをおばあちゃんに切り分けてもらい、船の上で苗のようにシートにくるまる。
 船に乗れるだけでわくわく。
 湖の上はあまりに広々していて雨でも気持ちよかった。

 それ以上ちかよらないでくださーい、とパトロールの人に言われるくらいに近寄って花火見物。
浴衣はもうぐしょぐしょだったけど、花火の大きさも音の振動も、ライトを回しながらタイミングを合わせて着火したりするしかけがちょっと見えてしまうような近さも楽しかった。
 まあいっか、と思わないこと。
 まだだいじょうぶかも、と思わないこと。

 まあいっかじゃないもののために働いているのだし、
 だいじょうぶでないからみんなそこにいるのだから。
「医療者には患者さまの不条理な行動を制限する義務がある」と師長が答えた。
「いい、君たち。病院の外で、健康を犠牲にして人生を謳歌するのは大いに結
構。タバコを吸おうが、スカイダイビングをしようが、それはその人の自由な
の。でも、入院した以上、まず患者さまは生存することに集中していただきた
いの。それができない患者さまには、私たちが責任をもって介入します。それ
が病院のモラルというものよ」

 僕たちは何も言えなかった。師長の言葉には、何十年もの経験に裏打ちされ
た力強さがあった。

「あなたたちの想いはよく分かるのよ。とても人間的だわね。10人のうち9
人の患者さまについては、あなたたちの対応で安らぐかもしれません。でも、
1人の患者さまで致命的な失敗があるとすれば、その対応は誤りなの。病院と
いうのはそういう場所です」

                            国際保健通信60より


 たばことかお酒とかおやつとかしょうゆとか。

 人にだめと言う前に自分がやめなさい、というのが小さい頃に習った基本ではなかっただろうか。
 見るからに自暴自棄な、そしてそうなってしまうのもちょっとは理解できる、というような人がこっそりたばこを吸いに行くことに対して、どうにかみつけてひたすらたばこはだめと行って引き止める、ということしかできない日々。
 何かがちがう、とは思うのだけど。
 そうか、そういうことか。
 いよいよついに高校野球決勝の日。
 私はふろ当番にシーツ交換の日。
 シーツを交換しながら、高校野球を見ている患者さんのテレビをちらちら。
 どうやら負けている。

 1階におつかいに行った帰り、お会計待ちのところにあるテレビを見たら、
  佐賀北特集みたいになっていた。
 負けたチームのがんばりぶりを映してるのかあ、なんて思っていたら。。。

 家に帰ってきてびっくり。
 なんと優勝!
 一回戦に勝っただけでもほんとうはだいぶびっくりだったのに。

 逆転のシーン、見たかったなあ。
 こんなことなら、試合を録画しておくんだった。。。

 それにしてもこの感動を誰と分かち合えばいいのやら。。。

はすのつぼみ
 ○○。こランドへ泳ぎに行く。
 屋外プールは意外にとても暖かくて、プールの底の鉄板に反射する光がとてもきれいで気持ちよかった。
 一年のうち数ヶ月しか屋外プールでは泳げないかと思うと、ますます貴重に思えてくる。

 そして温泉の洞窟のところであったまって、とまとさんの高校時代の先生に会いにまた山の中へ。
 ずっと前から仕事はきっちり定時に帰ってマイペースで泳いだりヨガしたりしていたような印象のあるとまとさんが高校生で受験勉強やら部活やらしてたなんて想像もつかないだけあって、とまとさんの先生は小さいおばあさんだった。
 とてもお上品そうな小さいおばあさん。

 前の晩、manaoというのはタイではすだちみたいなかぼすみたいなやつで...ととまとさんが説明してくれていたけれど覚えられなかったらしく、先生に会ったら、manaoはまながつおになっていた。
 まながつおさん。
 なかなか新鮮な感じ。

 お昼をごちそうになり、先生のお宅へおじゃま。
 車の後ろの窓ガラスから落ちかかったもみじマークをひらひらさせてすっ飛ばす先生の車の後について山道を登り、思わず話に夢中になって先生の車が曲がるのに気づかず通り越しそうになったところで到着。
 ありとあらゆる空き瓶に、その辺に咲いていそうな花が無造作に生けてあるのがかわいらしかった。
 お茶とお菓子をごちそうになり、おみやげまでいただいてお別れ。
 介護保険の新たな一面をかいまみる。

 家に帰ってひと休みし、せっかくなので地元の食べもの屋さんに行ってみようということになる。
 ネットでチェックし、夜道をぐるぐる。
 駅前の大きなぱんだの看板のお店に入りかかるが、看板以外に惹かれるところがないのでやめておく。
 男の人とデートのときは、こんなふうに迷っちゃだめ、ととまとさんに教えられる。
 とりあえず覚えておくか。

セロリうどん

 やっぱりここは、こんなときのお食事風にいけてる田舎ではないので、前から気になっていた隣村のカフェに行ってみる。
 民家風の建物だけでなく、ごはんもおいしかった。
ここの名物セロリうどん。
 あつあつのトマトがおいしすぎる。
 じゃがいもと塩辛の炒め物も、新しい味だった。



 でも、いけていたのは建物とごはんだけではなかった。

 お店のおじさんにとうもろこしをおみやげにもらったりしていたら、
  トイレから出てきたとまとさんが、トイレに行ってから帰った方がいいと思うよ、と言うので入ってみたら。。。

トイレ

 今までに見たトイレの中ですごかったのは、 
  トイレットペーパーホルダーに南京錠がかけてあるプラハのユースホステル、
  使用済み生理用品が塀の外に投げ捨てられてるベトナムのトイレ、
  ○賀県鳥○市の○屋敷の男子トイレ(わざわざ入っていって見てきた)、
   などなどいろいろあるけれど、それでも衝撃のトイレだった。
 災害のときにトイレに閉じ込められたらどうしようなんて思うけれど、
  このトイレならちょっと閉じ込められちゃったほうがいいかも。 
壷庭

 とまとさんが遊びにきてくれた。

 また柊さんでおそばを食べ、山の上へ遊びに行く。
 あんなに混んでいる柊さんは初めてで、なんだかちょっとほっとした。
 山道をくねくね登っていたら、メーホンソンでのドライブを思い出した。

 私ってば、とまとさんの運転にぎゃーぎゃー奇声を発していたらしい。
 そして、軍事基地のようなところに迷い込んでしまったらしい。

 人の運転にぎゃーぎゃー言うのは失礼だ、ととまとさんにおこられる。

 私のメーホンソンドライブの思い出といえば、
  駐車場から出る坂道で、車がちょっとがたっと下に落ちたこと、
  そして後ろの席でりんごと爆睡してしまって後悔したこと、なのに。

 どこに何をしに行ったかなんてほとんど覚えていないで、
  そんなふうにまさかこれが数年後にも思い出されることになることは思わなかった、というようなことだけが思い出になっていて、
  それでもそれが楽しかったーという思い出そのものになっているので、
   記憶力がこんなところでもしょぼいことにくよくよするのはやめようと思う。

 そして今日のおふろは久しぶりに保科館。
 さんざん道をまちがえてたどり着くと、団体さんが来るので2時間後まで入れない、と張り紙が...。
 だから電話してからくればよかったのに、ととまとさんにおこられそうになりながら(というか既におこられた?)、フロントの人にお願いして入れてもらう。
 さーっと入ってきますから、と言ったくせに、結局団体さんよりも後まで露天に浸かる。

 「スタッフはボールペンを使っていた」「スタッフはピンクと水色のエプロンをしていた」と一日かけて気づいた職場体験の中学生にその先を気づかせることができるはず、ということに気づかされる。

 夜は柳本ジャパンを応援しないといけないので、うちでビール。
 ブラジル戦だったので、ビール1本開く前に終わっちゃうかと思ったけど、なかなかがんばってくれた。
 テレビに気をとられて枝豆を蒸しすぎたら、栗みたいな味になった。

いちごヨーグルトパック

 一日の仕上げに、アロエパックといちごヨーグルトパックでお肌の手入れ。
 とまとさんが選ばせてくれたので、もちろん私はいちごヨーグルト。
 釜山の温泉を思い出す。
 それぞれが肌にいいと信じていることをあんなにもやりたい放題の環境に、私もしっくりとなじめるようになりたい。