PECSは、「要求」を伝える手段だけではありません。 | 言語聴覚士が教える、幸せな赤ちゃんやこどもが育つ発達のヒント

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言語聴覚士として、25年以上臨床を続けてきた経験を、皆様にお伝えしています。

こんばんは。
久しぶりにPECS話題を。

今月末に大阪では、PECSのレベルⅡの講座があります。
もちろん、私は、受講に行きますよ~♪

そして、PECSの対象児はどのようなお子さんか。
PECSのホームページより。

    Q.5 PECS が適しているのはどんなタイプの子どもや大人ですか?

    A.5 今のところ,どんな人にPECSが適しているかを正式に評価する方法はありま
    せん。しかし,いくつかの基本的な問が役に立つかもしれません。

    1.その人は,現在しかるべき機能的コミュニケーション・システムを持っていますか?すなわち,その人は,自分の欲求や要求を他者に伝えることができますか?

    2.その人が伝えようとしているメッセージを,他の人たちは常に理解していますか?

    3.その人が現在使っている言語構造は,その人に必要な複雑さに達していますか?言い換えると,その人が伝えるメッセージは,その人にとって重要な詳細をすべてカバーしていますか?

    4.どのような条件下で,その人はコミュニケーションを取っていますか?自発的?応答的?模倣的?機能的コミュニケーションと言えるものならすべて,自発的なコミュニケーション・スキルと,さまざまな問への応答のコミュニケーション・スキルを含みます。

    上述の問のいずれかの答が「いいえ」なら,その子どもはPECSの候補者です。絵カードを交換する運動スキルを持ってさえいれば。



    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    「要求」はことばでできるから、うちの子は、PECSじゃない・・・
    そういうことばを、しばしば聞きます。

    でも、本当に、あなたのお子さんは、
    自分の気持ちをちゃんと伝えられてるかな?

    そして、さらに言ったら、
    コミュニケーションは、自分の要求を伝えることだけではないの。

    「要求を伝える」これは、さまざまなコミュニケーション行動の中の
    一つでしかありません。

    他に、コミュニケーションには、状況の説明であったり、
    注意を引く行動であったり、
    質問に応答することだったり、
    自分の気持ちを表すものだったり、
    やりとりを楽しむものであったり・・・・

    本当に、いろいろな機能があります。

    だから、
    要求が言える!っていうのは、
    1つの機能が使えるだけだから、
    まだまだ、いろんなコミュニケーションを支援していく必要があります。


    先日も、ほしいものを、言葉で言えるけれど、
    学校で、「いや」といえなかったり、
    途中でやめることができないために、

    不眠になってしまう自閉症のお子さんがいました。

    とりあえず、ことばはあるけれど、
    要求は単語でできているレベルだから、
    2語文を目標に。

    その次は、数とか、種類も文で伝えることを目標に
    PECSを実施しています。

    そして、実施したら、
    ディサービスで、はじめて、ことばで要求を伝えることができるようになりました。
    そう、家以外では、やはり伝えられなかったのですね。

    その伝えられなかったのに、PECSというステップを踏んで、
    他の場でも、発語ができるようになりました。

    そして、最近は、
    「きゅうけい」要求を学習しています。

    本当は自分でしんどくなったら、
    「きゅうけい ください」とPECSで伝えてほしいのですが、

    まだ、「きゅうけい」を要求できるものと理解していません。

    だから
    訓練のスケジュールの中に
    「きゅうけい」という時間を入れて、
    まずは、
    「きゅうけい」するということを練習しています。


    前回からはじめて、今回で2回目。

    そうすると
    昨日は、

    訓練の途中で、外をみて
    「雨!」といったのです!!!!!


    いや~~~~

    これは、お母さんと一緒に

    「え?今、雨って言ったね~」と確認。


    読者の方は、「それがどうしたの?」って思われるかもしれませんが、

    これは、
    コミュニケーション、言語の機能としては、
    「コメント機能」になるのです。

    要求ではないですよね。

    「雨」
    つまり、
    「あ、雨が降ってるよ」ということを
    私たちに伝えたのです。


    これ、
    これが大事なのです。


    ことばは、
    要求するだけに使うものではないのですよね。

    ことばは、
    心と心のやり取りなんですよね。


    PECSでは、
    まずは、指導は「要求」から入ります。

    そして、その次には、
    「コメント」の練習もしていきます。

    そして、慣れてきたら、
    「手伝って」要求や
    「きゅうけい」要求。


    「待つ」ということの練習などなど。

    生活していくために必要な
    さまざまな機能だとか、
    報告機能、
    感情の表現などを支援していくものなのです。


    だから、
    「PECSは、要求を伝えるのが目的だから、
     うちのこではない。」

    「でも、問題行動があったり、
      話はするが、的外れ・・・」などがあったら、
    一度は、PECSにトライしてみていただきたいのです。


    本当に、私自身も、やっとPECSにとりくんで1年ですが、
    想像以上に、自閉症のお子さん自身の内面の気づきや
    成長が見られます。

    1人ではなかなかできないものではありますので、
    ぜひ、地元にPECS研究会があれば、研究会に入って取り組んでみてくださいね。