ソーヤのフォトスケッチ -6ページ目











随分と昔の話だが、当時付き合ってた女が僕の指先を触りながら、あなたの手が好きだと言われたことがある。

他に褒める所が無かったのかもしれないが、それにしたって僕の手は美しくも何ともない。分厚くて関節も太めだ。

爪のカタチも縦より横幅の方が長いいわゆる男爪。スマートさは全くないと思うのだが、

意外な場所が褒められたものだから随分と年月が経った今でも印象に残っている。

そのせいか、いやその時からか指先は特に気にするようになった。

爪は人から見れば深爪じゃないかと思われるくらいに短い。キレイに手入れしているというより爪を切るのが癖に近い。

もともと短い爪を切るので、爪切りを使うよりヤスリでゴリゴリと擦ることが多い。

爪を切るとき、時折その女の事を思い出す。昔流行った化粧と昔のヘアスタイル。声は正直思い出せない。

時と共に曖昧になっていく記憶。

僕の指先に触れながら言った”手が好き”という言葉だけが頭の奥底に残っている。