「アメリカの大学は入学が易しく、卒業が難しい」の裏にあるもの | 北加発:アメリカ合州国、教育、人々、その他、なんでも

「アメリカの大学は入学が易しく、卒業が難しい」の裏にあるもの

このブログの読者の方はもうご存知のように、このテーマのような大学とは対置して入学できれば、必ず卒業できる大学も少数ながらあるわけですが、学生が卒業できない原因はなにかを探ことはなかなか難しいように思います。たぶん、思いつきやすい回答としては、教育の質が悪い、教授と学生の数に比率の問題、教授の質(博士号取得の大学院のランク)などなどで、大学(教育)の側に主な問題があると思われるのが普通ではないでしょうか?

しかし、教育というのは、授ける側と受け取る側があり、上で述べた理由は、受け取る側に不足、問題がないとして、という仮定の上での答えだと、私は感じていました。受け取る側に大学レベルの授業を受ける学力的な準備ができていない、学費稼ぎのため勉強時間が足りない、家族の面倒を見なければならないといった、学生の側にある個人、個人の抱える課題はなかなか表面に現れないので、卒業率を数字化するなかで問題が焦点からこぼれてしまう傾向があると思います。とくに、このような学生の集まる州立大学では、能力があったとしても、お金がない、時間がない、その両方がない、などの物理的な制限から大学を修了することが出来ずに中途退学を余儀なくされる学生も多いと思います。

私の住んでるカリフォルニアでも、働きながら大学に通っている学生の比率は、UCよりもCSUのほうが数倍高いように思います。勤労通学学生のおおいCSUでは30代、40台の学生もめずらしくなく、6年間でも卒業できない学生がたくさん居ます。

たとえば、Harvard Collegeに入学した学生たちをFA付きで、そのまま、CSU Dominguez Hillsに転学させて、4年間在学させると、彼らに関する卒業率は95%くらいまで上がることは容易に予想が付くと思います。

こうして見ると、卒業率の低い大学というのは、逆説的にいえば立派な大学で、学生に要求する科目習熟度の規定を頑固に守っていて、それに達しなければ合格点を与えないということの証でしょうから、このような大学を卒業した人は胸をはって大卒ですと言えるようにも思います。

学校のレベルというのは、ほとんどの場合、そこの教育の質ではなくその質を決定する在学する生徒、学生の学力レベルだと思います。そして、その生徒、学生の学力レベルを決めるのは、家庭の資力、教育環境が決定的な要因のようですから、ほんとうに、高校でも、大学でも教育のレベルや卒業率を上げようとするなら、子供が幼いころから思い切り勉強ができる環境を整備するような政策が必要があるのではないでしょうか? これは、教育の問題をこえた政治の問題ですね。貧困こそが教育一般の最大の敵なのではないでしょうか。

日本からの留学生にとっては、一番の問題は英語力の不足で「大学レベルの授業を受ける準備ができていない」に該当すると思われますから、これが挽回できなければ、卒業が難しいということになると思います。私の知っている限りでも、4年生になっても英語の習熟度が大学の規定点ぎりぎりの留学生も結構いるようです。

この大不況のなかで、州立に限らず大学そのものの資力が落ちてきているので、そのしわ寄せを受ける学生にとっては、全く厳しい状況だと同情しています。景気と卒業率は、まったく比例関係ですね。