題名からして引いてしまう作品だけど、内容はかなり面白かった。

人のクローンを食用に飼育する世界観の設定はキツイ。それでも読者にミスリードさせるような設定と、深く練られたストーリーには驚いた。真犯人の本当の狙いは予想出来なかった。

とはいえ、難点はクローンが犯人ジャねえの!ってのが予想しやすいし、多重人格者って描き方がずるい気がした。

老化をコントロールしているのは染色体に存在するテロメアという構造といった豆知識も散りばめられて、気持ち悪いと思いながらもどんどん読み進める磁力があった。

人肉食というのが過激すぎて映像化は難しいかなと思うけど、著者が1990年生まれの若者、これからも面白い作品を書いてくれると期待したい。

★★★☆☆

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世界的に流行した新型ウイルスは食物連鎖で多様な生物に感染し、爆発的な数の死者をもたらした。ヒトにのみ有効な抗ウイルス薬を開発した人類は、安全な食料の確保のため、人間のクローンを食用に飼育するようになる。食用クローン人間の飼育施設で働く和志は、自宅で自らのクローンを違法に育てていた。ある日、首なしで出荷されたはずのクローン人間の商品ケースから、生首が発見される事件が発生する。和志は事件の容疑者とされるが、それは壮大な悪夢のはじまりに過ぎなかった―。異形の世界で展開される精密でロジカルな推理劇。第34回横溝正史ミステリ大賞最終選考会で物議をかもした衝撃の本格ミステリ、解禁。

人間の顔は