これはスゴイ!最後の5ページを電車の中で読んではいけない。

うっかり読み進めていくと「あの人、なんか泣いてるみたい」といぶかしがられること間違いなし。序盤は軽いタッチでさくさく進むが、恵の復讐かと思いきや、えっ、DJで話していた内容が実は、結末の異なる実話だったわけ!というように伏線の張り方が最後のほうにわかってきて、さらにさらに最後の種明かしに泣かされた。

奥多摩山中での「後藤」との対峙あたりから徐々に高まる期待感が最後に違う形で爆発する。すごいモノガタリだった。

「たとえ目に見えない透明な世界だったとしても、本気で願えば、人はそれに触れることができる。両足で立つことができる。僕はそう信じていた。」

傷ついた人たちがどう傷から立ち直ることができるのか、楽しく読めて考えさせられもした。

★★★★★

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ラジオのパーソナリティの恭太郎は、冴えない容姿と“特殊”な声の持ち主。今夜も、いきつけのバー「if」で仲間たちと過ごすだけの毎日を、楽しくて面白おかしい話につくり変えてリスナーに届ける。恭太郎が「if」で不審な音を耳にしたある雨の日、びしょ濡れの美女が店に迷い込んできた。ひょんなことから彼女の企てた殺害計画に参加することになる彼らだが―。陽気な物語に隠された、優しい嘘。驚きと感動のラストが心ふるわす―。