ハードカバーで発売されていた頃に買おうかどうか迷っていた本を、文庫化されたのを機に早速購入しました。

その本は「逢沢りく(上)(下)」。

あの、「きょうの猫村さん」を書いているほしよりこさんの作品で、2015年に手塚治虫文化賞の大賞を受賞している作品です。

 

主人公は逢沢りくという東京在住の女子中学生。一見理想的な家庭環境で生まれ育ち、見た目も容姿端麗で完璧な女の子ですが、実は複雑な家庭環境にあり心の闇(痛み)を抱えています。そのせいで無感情でありながら自由自在に涙が流すことができ、周囲を困惑させることもしばしば。そんなりくが母親の勝手な判断で大嫌いな大阪へ一時預けられることになるのです。

 

これ以上先のことを上手く書くことはできないし、作品を読んでもらっていろいろ感じてもらうのが一番なので書きませんが、少女の心の揺らぎを丁寧に描写したとても素晴らしい作品です。私の中学時代なんて歴史のように古くて、果たして感情移入することができるのだろうかと思いましたが、いやいやもうそれはそれは…なんというか…

私はりくとは生まれた時代も境遇もなにもかも違うけど、私もりくと同じ頃には誰にも理解されない(と自分自身が思いたかった)心の闇はあり、現在はりくの母親のように他を傷つけなければ自分が幸せになれないみたいな感情が、どこかにあるような気がする。

 

ここまで書くと苦しくて重々しいストーリーなのかなと想像されそうですが、そこは「猫村さん」の作者ほしよりこさん。随所にクスッと笑える日常がちりばめられています(これがこの物語の肝です!)。そしてラストシーンでは、読み始めた頃とは全く違う空気が流れています。個人的にはここで終わるのは残念、もっとりくのこれからを見てみたいと思ってしまいますが、りくの今後をいろいろ想像できる素敵なラストシーンです。

 

 

おっと!これ以上書くとネタバレしちまいそうだ!

ぜひ読んでもらいたいおすすめの一冊(二冊か)なので、レビューはこの辺で切り上げたいと思います!