50歳の現役言語学学者アリスは、ある日言葉をド忘れする
経験をしました。
さらには、熟知しているはずの道で迷子状態に陥ったり、
思わぬ症状に見舞われるようになりました。
診断の結果は「若年性アルツハイマー病」・・・決定的な
治療法も見つかっていない難病です。
その症状が次第に進行していることを自覚したアリスは
重症に陥った時のために、自分のパソコンに、自分向けの
メッセージを残す算段をします。
いよいよの段には、自らがパソコンに向かい、その時に
必要と思われる処置を自らの力で遂げられるための準備
です。
そうした恐怖心にはお構いなく、症状は無情な進行を
みせていきます。
「若年性アルツハイマー病」になった本人、またその彼女を
支えるべき家族や友人には、どんな対応が残されている
ものか?
「記憶の消滅」という現代的を象徴するかのような難病を
扱った重いテーマですが、大変に真摯な描き方になって
いるところが好感です。
こうした病気を扱った作品は多くありますが、ほとんどの
場合、具体的な「結論」を描き切るところまで行くことは
ありません。
「記憶が消滅していく」という難病には、それだけ重く難しい
問題が絡み合っているということなのでしょう。
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「アリスのままで」 2014年 監督:リチャード・グラツァー
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アレック・ボールドウィン/ジュリアン・ムーア
アリスを演じたのは、本作でアカデミー主演女優賞に輝いた
ジュリアン・ムーア/
ちなみに、この年の同男優賞を獲得したのが、
2014年「博士と彼女のセオリー」(監督:ジェームズ・マーシュ)で
主人公であるスティーヴン・ホーキング博士を演じた
エディ・レッドメイン/でした。
ジュリアンは「アルツハイマー」、エディは「ALS(筋委縮性側索硬化症)」、
奇しくも両者ともに「難病患者」を演じることで大きな栄誉を
得たことになります。
アリスの夫役は、
1990年「レッド・オクトーバーを追え」(監督:ジョン・マクティアナン)の
ジャック・ライアン役で注目されたアレック・ボールド・ウィン/
近年ますます「体重増」の印象が強くなっています。
監督は、リチャード・グラツァーという人だそうですが、
実はこの方も本作の企画があがった当時には
ホーキング博士と同じ病「ALS(筋委縮性側索硬化症)」を
悪化させていたとのことで、ワッシュ・ウェストモアランドと
いう人のサポートを得て、やっとのこと完成までこぎつけたそうです。
(二人の共同監督ということかもしれません。)
さて、そのグラツァー監督は、この年のアカデミー賞授賞式の
2日前に吸不全を起こして、病院に運び込まれたそうですが、
その病室で共同監督?のウエストモアランド氏と共に授賞式を
無事視聴することができました。
しかし、その後まもなく(約3週間後)の、2015年3月10日に
ロサンゼルスの病院で息を引き取ったとされています。
生年は1952年1月28日とされていますから満63歳・・・
今の時代、少し早すぎるような気もするところです。
アンティークな作品が多くて恐縮至極にございます。
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