非常に幸いなことに、「戦争」という出来事に長らく無縁でいられた
近年の日本ではあまりリアルな問題として捉える機会がないよう
ですが、終戦の後になって生まれるいわゆる「復員兵」については、
どの国もそれなりの問題になる傾向があるようです。
たとえば、映画「ランボー」シリーズの第一作1982年『ランボー』は
ベトナム帰還兵が社会から孤立してしまう様子を、割合丁寧に描いて
共感を得ました。
もっとも、第二作目以降はやや荒唐無稽気味なアクションに終始した
感があって、本来の帰還兵問題は影を潜めてしまった印象には
なりましたが。
それはさておき、第二次世界大戦の終結後に、戦場から帰国し
新たに市民生活を始めようとする三人のアメリカ復員兵が、様々な
問題に直面する姿を真摯なタッチで描いたのが本作です。
一人は、家を空けているうちに自立した意見を持つまでにすっかり
成長した子供たちの姿に戸惑いを隠せないまま、戦場のトラウマに
よって復員後も酒を手放せないでいる者。
一人は、陸軍航空軍大尉としていくつもの勲章を得ながら、なかなか
思うような就職口を得られずに、貯金を使い果たした挙句に、結局は
後輩の部下として薄給で元のドラッグストアへの復職を余儀なく
される者。
さらに、航空母艦を撃沈されたときに火傷を負い、両手共が鉤型の
鉄製義手になって帰国した者。
この同郷の三人が、たまたま帰郷用の同じ軍用輸送機に乗り合わせた
ことで知り合い、町でそれぞれが元の生活に戻ろうと努める姿を
描いています。
その年のアカデミーの10部門にノミネートされ、うち9部門を受賞した
名作中の名作で、興行成績においても、トーキー時代以降の映画として、
1939年『風と共に去りぬ』(監督:ヴィクター・フレミング)以来の大ヒットを
記録したそうです。
その昔は結構硬派な作品でも歓迎されたということでしょうか。
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「我らの生涯の最良の年」 1946年 監督:ウィリアム・ワイラー
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左から)ハロルド・ラッセル/ダナ・アンドリュース/
フレドリック・マーチ/
帰還後の家庭になかなか馴染めず、酒を手放せない帰還兵に、
1931年『ジキル博士とハイド氏』(監督:ルーベン・マムーリアン)と
1946年の本作で二度のAW主演男優賞を獲得したフレドリック・マーチ/
その妻役を、スクリーン上の「理想的な妻」との評価を確立した
『影なき男』シリーズのマーナ・ロイ/
陸軍航空軍大尉役は、
1947年『影なき殺人』(監督:エリア・カザン)
などのダナ・アンドリュース/
その妻役を、
1947年『虹を掴む男』(監督:ノーマン・Z・マクロード)
などのヴァージニア・メイヨ/
義手復員兵には、演技は未経験ながら事故により実際に
義手のハロルド・ラッセル/
演技はそれまで未経験だったようですが、本作で見事に
AW助演男優賞を獲得しました。
その彼を生涯に渡って支えようとする女性に、
1941年『偽りの花園』(監督:ウィリアム・ワイラー)※助演
1942年『ミニヴァー夫人』(監督:ウィリアム・ワイラー)※助演
1942年『打撃王』(監督:サム・ウッド)※主演
でデビュー後の三作続けてAW女優賞にノミネートされた
テレサ・ライト/(『ミニヴァー夫人』でAW助演賞獲得)
監督は、
1942年『ミニヴァー夫人』(出演:グリア・ガースン/ほか)
1946年『我らの生涯の最良の年』※本作
1959年『ベン・ハー』(出演:チャールトン・ヘストン/ほか)
で三度のAW監督賞に輝く名匠ウィリアム・ワイラー/
アンティークな作品が多くて恐縮至極にございます。
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