これが戦なのか。

 軍が箱根を越え、小田原を見下ろす笠懸山にに着いた時、殿下より城を作れとの命令があった。

 小田原城を見下ろす城を作り、北条方に驚きと恐怖を与える作戦のようだ。

 戦に来たはずなのに城普請をするとも思っていなかったが、無事作り上げた。

 

 さらに殿下は、妻妾を呼ぶようにいう。

 私も呼ばないわけにはいかず、妻をこの地へ呼び出した。

 その後も、茶会や能など、娯楽の日々が続き、まさかに戦をしているとは思えなかった。


 そのような中、我らに館林、忍の両城を攻略するように命令が下された。

 私のほかには石田治部や長束殿など普段は奉行として働く者と佐竹など関東の諸将である。

 ついに一軍を指揮し、功をあげる事ができる。

 そうした私の淡い期待は、石田治部によって裏切られた。

 彼がいる以上、彼を納得させる作戦でなければ実行されないのだ。

 彼は、奉行にはこの上なく相応しいが、将としてはいかがなものか。

 残念ながら、そう感じずにはいられなかった。

 なんとか、館林城は降伏させたが、決して順調とはいえない。

 忍城を落すのにも時間がかかってしまいそうである。