東北の検地は、ほぼ予定通り進んでいたが、九戸政実が一揆を利用して兵を挙げた。

 討伐には東国の諸将があたったが、私も上杉殿と共に出陣した。

 この一揆とも反乱とも言えるものは半年かかってようやく鎮圧された。


 その間に、私の身体に異変が起きた。

 はじめは左腕に小さな斑点のようなものが出来ていた。

 大して気にもせずにいると、少しづつそれが大きくなり、永楽銭ほどになった。

 さらには、これに感覚がない事に気づき、しばらくするとその隣に新しい斑点が出来ようとしている。

 疲れからくるものだと自分に言い聞かせてみたが、そのうち右腕にもその斑点が出来始めた。

 その斑点の部分に限り、さわっても感覚がない。


 京に戻った後、侍医の服部殿に診せたが、まだ詳しくは解らないという。

 曲名瀬道三殿に診せた方が良いと言われ、不安と戦っているうちに、曲名瀬殿が我が屋敷においでになった。


 不安はあたっていた。

 皮膚病の中でも不治といわれる重いものであった。

 しかも、このまま死ぬまで身体を蝕み続ける。

 ただ、あと十年は生きられるという言葉に心がいささか軽くなった。

 それに、伝染力はあまり強くなく、日常、城に出仕するぐらいでは染りはしないだろうということである。

 今まで通り出仕できるのはありがたいが、私も重い業を背負ったものだ。