ついに、朝鮮からの一部撤退が決まった。

 今後は講和に向かって進む事になる。

 また、この休戦撤退の背景には、今年の八月、殿下にお子が誕生したこともあるのかもしれない。


 とにかく、我らはこの異国の地での戦からとりあえず解放された。

 ただ、南部に四万の兵を残し、講和を急ぐこととなった。


 そこで問題となるのは講和の交渉をしている男である。

 小西と明側の沈惟敬が交渉の責任者なわけだが、どうにも心もとない。

 春にも策謀に騙されたばかりなのだ。

 それに、加藤、宇喜多などの諸将との一致が取られていない。

 小西はひたすら自分の手で講和を結ぼうとして、すでに孤立しているようにも見える。

 その小西を助けているのが石田であった。

 石田は、私や増田殿に諮ることなく、殿下の言葉として自分の考えを小西に与えている。


 これでは、また明の国使が殿下と対面した時、講和が簡単に破れるのではないか。

 そう思ったが、あくまで講和を結ぶ事が現在の目標である以上、交渉の内容を知らない私は何もいえる立場ではない。

 とりあえず、講和がしっかり結ばれるのを願うだけである。