関白殿下の命を受け、本日春日山城から出立する。
多くの諸侯は駿府城に集まるよう命じられている。
しかし、上杉軍は駿府に向かうのではない。
前田、真田らと共に東山道の諸城を攻略して小田原に向かうようにとの命令である。
その最初の目標は上州松井田城だ。
松井田城は碓氷峠の麓にあり、城兵は二千余と聞いているが、攻めるのは簡単ではないだろう。
城を守る大道寺政繁もまた、北条家の草創期から仕える家に生まれた勇将である。
我ら東山道軍は真田の上田城に集合することになった。
実は我ら上杉の出立は他の諸侯達より早い。
前田殿をはじめ、ほとんどはまだ居城に留まっている。
これにはわけがある。
ひとつは上杉に反意がないことを示すためである。
また、もうひとつは景勝様が真田の次男信繁に会いたがっているからだ。
信繁は二年程春日山で人質として過ごしたが、その後京に移された。
関白殿下が希望したからだ。
そこで、久々にゆっくり話がしたいなどと景勝様は希望した。
景勝様が自分からそのようなことを言い出すのは珍しいことであり、実行されることとなった。
私も実は楽しみにしている。