太閤殿下から越後への帰国を許されていた我々に京への呼び出しが会った。

 伏見に城を造るから普請せよとの事である。

 海を越えた戦を行なっているというのに新たな城を建てるとはどのようなおつもりなのであろう。

 殿下はこの新たな城を隠居所との事である。

 それでいえば大坂城は豊臣家の本居城、聚楽の第は関白としての居所ということになるのだろうか。


 関白の職は既に秀次様に譲られている。

 しかし、それは一時的になる可能性が高くなった。

 昨年、拾丸様がお生まれになったからだ。

 殿下はおそらく拾丸様に跡を継がせる事を考えておられるだろう。

 しかし、殿下と拾丸様とでは歳が離れすぎている。

 拾丸様が成人する日まで殿下が生きておられるかどうか。


 話を戻そう。

 伏見の城は朝鮮の王と会見するための場所でもあるようだ。

 彼の地との講和は進んでいるとの事である。

 ただ、現状をこの目で見ている身としては、殿下の思い通りになるとは到底考えられない。

 どうも不安が付きまとってしまう。