モンゴルにおける日本の貿易投資機会

繁栄への踊り場

2008年9月12日

モンゴル産業省

貿易投資政策アドバイザー

松岡 克武

総論

モンゴル経済は資源高を主因に好調であり、内需も拡大している。モンゴルにおける市場経済化の進展、自由貿易体制の恩恵もあって、わが国産業にとって、多くの業種にとり、新たな収益機会が出現しているが、中国、カナダ、ロシア、米国、韓国に比し、日本の業界のモンゴル進出が遅れている。日本の中堅・中小企業、地方産業の方々が、モンゴルを訪問されれば、中長期で、投資利益率の高い投資機会を見つけることができます。今後、日本―モンゴル間で、ビジネスマッチングの機会を創設することが両国の貿易投資関係を深化させるのにはとりきわめて肝要です。

各論

以下は、各セクターの状況と貿易投資機会の一例であります。

鉱業;2003年現在で、(1569の鉱床があります)。これまでの日本の鉱山投資は他国と比べてきわめて低調です。地質;探査情報は、鉱山地質センターで鉱区を特定すれば閲覧で来ます。要求に応じた鉱床を探す会社もあります。地質情報を日本語で評価する機能もあります。多くの企業が探査権の販売、共同開発の日本側との機会を提供しております。鉱業部門荷については、別途、詳しく述べます。

建設業;モンゴルのデベロッパー・建設業界は活況です。タワークレーンが乱立しています。建設業の利益率は40%といわれています。(中国業者を使う場合)。モンゴルでは24万戸の住宅が不足しており、潜在的需要は大きいです。建物の品質はよくないので、日本製というと、プレミアムがつきます。建設資材も活況です。

食肉・加工品

モンゴルの食肉の対日輸出解禁の方向が出ています。日本の農林水産省が偶蹄類の食肉加熱処理の基準を示しました。これに応じた動きが始まりつつあります。

製鉄・鉄鋼製品関連

建設用内需、中国への輸出等で、既存ダルハン製鉄所に加え、新製鉄所の建設計画があります。

また、これと関連した種々の動きが出ています。

ウール、カシミア、ニット

モンゴルには4000万頭を越す家畜が成育されており、羊、カシミア山羊、ヤク、ラクダの毛を使った製品が生産されています。日本への輸出に多大の関心があり、代理店、販路開拓の支援を求めています。ニッチマーケットを目指した企業も存在し、日本市場向けのデザイン、品質、納期等を指定してくれれば対応したい企業が多数存在します。小型企業では、日本からの開発輸入に期待があります。高級品製造企業、ヤク専門企業、ニット専門企業等、訪問していただければ、日本で売れそうな製品が特定できる可能性があります。

カーペット

モンゴル最大のErdenet Carpet社(ISO 9000取得済み)はじめ、日本市場向けのデザイナーと協働したい企業が複数社あります。品質はベルギー産と同等とのことです。価格上の有利性があります。

皮コート

最大のモンゴルネヒー社はじめ、日本人のデザイナーと協働し、日本市場を開拓したい企業が複数社あります。価格上の有利性があります。

皮革製品

原料は豊富にあります。イタリーの企業が最新設備を入れて、半なめし状態でイタリーに持っていっています。大手モンゴル資本の工場が機械を更新して、技術力をつけることで、販売増を期待しています。日本とのJ/Vの希望が有ります。豊富に皮製品の原料があるのに、靴の製造は行われていません。靴製造の日本の中小企業には機会があるでしょう。

薬剤・病院

モンゴルの薬剤販売には登録が必要ですが、現在、約1700品目登録されています。このうち、日本の薬剤は2品目しか登録されていません。日本製品は品質が優れているとの一般認識がありますから、大きい潜在性があります。

当地は医療施設が遅れており、すでに進出している韓国の3病院は活況を呈しています。日本の病院が進出すれば大きい潜在性があります。株式会社での経営が可能です。

農業

ダルハン地域では、韓国・中国の企業が農業用地を買い漁っています。モンゴル農業は、食料自給、食の安全、食生活の構造改革(肉主体から、野菜の摂取へ)の観点から、潜在性の高い分野です。大規模農業、株式会社形態による農業経営等、モンゴルの農業適地については、日本にとり、大きい潜在性があります。複合農業による年間を通じての生産の可能性もあります。日本と共同経営を希望する企業が複数あります。

モンゴル自然産品

ビタミン・抗酸化物質を多量に含んだチャチャルガン(中国名サジー)を使ったジュース、ワイン、オイル、化粧品材料等の対日輸出の可能性があります。品質改良技術付で、日本からの事業投資、販路協力を求める会社が複数あります。中国のサジーより、モンゴル産は品質がよいとして、中国工場をたたみ、モンゴル進出を企てているドイツ企業があります。

金融業

銀行の収益は最近、好調です。日本の金融機関はKhaanBankを除き、ほとんど出てきていませんが、Golomt Bankはスイスの SBC, TDBはドイツのコメルツバンク, ZOOS Bankは、EBRDが24%出資、 Anod Bankは韓国の銀行と親しいです。企業融資では、EBRD, Standard Bankが、優良企業に融資しています。欧州の銀行はモンゴルの中小規模鉱山開発融資に興味があります。また、GMSの中国支店は、250億ドルの資源Fundを組成してモンゴルの鉱床を買おうとしている。また、モンゴル資源会社の香港上場を慫慂しているようです。別に、不動産Fundの需要があります。アパート建設需要が旺盛であり、資金需要が強いです。政府は現在、インフレ抑圧のため、トグルグ資金の供給を抑えており、諸銀行とも外貨資金に対するニーズは強いです。

JBICの輸出金融に対する期待

当地の大企業は、設備更新投資期にあり、輸入のための資金需要がありますが、設備機器(輸入)をCashで買っています。日本製の設備機器輸出を促進するには、JBICの輸出金融の支援が必要です。 

冷蔵および暖房倉庫

野菜の流通、食肉の流通に取り、冷房・暖房倉庫の需要があります。大きい潜在性があります。

体育Sport用大規模施設

若者がスポーツをする大規模施設がありません。屋内でのスケート、テニス、バレーボール、バスケットボール等需要があります。柔道、剣道、空手等の教室があれば、人が集まるでしょう。

アルタンブラグ自由貿易地域の活用

モンゴル、ロシア国境にアルタンブラグ自由貿易地域が設けられています。多分、今年末からOpenします。5Haの地面はすでに完売しており(約60社)、よい場所は韓国が押さえています。日本企業はどこも購入していません。保税関係の免税措置、当該地域内での進出企業にに対しては所得税減免その他の恩典が与えられます。イルクーツク等、シベリア向けの販売・製造拠点としての活用、また、ロシア産木材の加工等で、利点があります。ロシアシベリア地方では、日本、韓国等の電化製品等が高く、イルクーツクからバスで、UBまで買出しに来ている現状があります。

日本製家庭用電化製品

日本製は品質がよいとの評価が固まっており、消費者が期待している。韓国製の方が多く出回っている。

衛生用品その他、

家電と同様、日本製品の評価が高いが、それほど、出回っていない。