皆様、こんにちは。

りんでんピアノ教室講師のブログにお越しいただきまして、
どうも有難うございます音譜

大変僭越ながら、「恩師の系譜」というテーマを新たに立ち上げてみました…。

クラシック音楽の作曲家の世界にも「楽派(=流派)」の様なものがございますが、
クラシック音楽の演奏家や、師弟関係におきましても、ヨーロッパ・ロシア・アメリカなど、
それぞれ、様々な「系統」というものが存在致します…「伝統」とも言えるのかもしれません…。

私はこれまで本当にすばらしい先生方に教えていただけるご縁に恵まれ、先生方には、
伝統と独自の解釈を見事に融和なさったそれぞれのスタイルにて、
根気強くご指導いただきまして、数えきれないほど、多くのことを与えて頂きました宝石白

その分、これから、その貴重な経験を自分がどの様なかたちで、周りの方へお返ししていけるか…
という点につきましては、大変恐縮しながらも、常々、自分自身の模索中の課題でございますが・・・
初心を忘れず、まずは日々の「研鑽」を重ねていかなければ…ビックリマークと思っております、今日この頃でございます…。

このテーマでは、自分の師匠たちと過ごした時間・教えを今一度思い出し、振り返る意味でも、
大変恐れ多いのですが…私の先生方の系譜(記録に残っているものを頼りに)を
辿らせていただきたいと思います。

まず本日は、スイスのジュネーヴ高等音楽院での恩師につきまして、
書かせていただきます…。


宝石緑ドミニク・ヴェベール先生宝石緑

下記先生の系譜でございます…


レオン・フライシャー(アメリカのピアニスト・指揮者)


アルトゥール・シュナーベル(オーストリア→アメリカユダヤ系ピアニスト)
※ベートーヴェン弾きとしても知られていますね。


テオドール・レシェティツキ(ポーランド生まれ。ウィーンで活躍したピアノ教師・作曲家・ピアニスト)
※パデレフスキも彼のお弟子さんで…ツェルニー同門のリストと共に有名な名教師でもあり、
 優秀な弟子を数多く輩出し、現在のピアニストに続く重要な系譜を築いた方です…。


カール・ツェルニー
※練習曲でも有名ですね…。



…そして何と…
あの、ベートーヴェンに行き着くのでした…!!アップ





ヴェベール先生は(フランコフォン=フランス語が母国語でいらっしゃるのですが、英語も流暢で
いらっしゃるのは、アメリカにも留学をされたからなのですね…)、レオン・フライシャー氏のもとで
勉強をされ、将来を期待された若手演奏家としての道を歩みはじめていらっしゃいました・・・。

(当時のニューヨークタイムズの記事から…)
ドミニク・ヴェベールは、リパッティ※の美徳のいくつか、また同様にフライシャーのそれらをも表現した。
繊細ながら、強い感受性、スタイルへの冷静な尊敬、しばしば、見境なく、おびやかされる様な、
音楽における官能的な巧妙さ…

(※リパッティ:パリのコルトーのもとで勉強され、夭折した天才的ピアニスト。
  ジュネーヴ高等音楽院でも教鞭をとっていらっしゃって、音楽院内には、
  銅板が飾られておりました宝石ブルー。)

その様な最中に、ヴェベール先生は交通事故に逢われ、背中に損傷を負ってしまいました…。
それから、後進の教育を人生の中心に情熱を注がれ、数々の優秀なお弟子さんたちを世に
送りだしていらっしゃいます。
ジュネーヴ高等音楽院でも、ヴェベール先生のクラスは近年、ずっと席がいっぱいの状態が続き、
新しい生徒は滅多にとっていらっしゃらない様です。
そして「生徒にとても慕われている先生だよね…」との評判は周りからも度々、耳に致しました。


ヴェベール先生のご師匠のレオン・フライシャー氏は、アメリカ合衆国のピアニスト・指揮者で
あられますが、ジョージ・セルが指揮するクリーヴランド管弦楽団と共演し、一連の記録的な録音を
残されながらも、局所性ジストニアを患われ、1960年代には、右手の自由を失っていらっしゃいます。
ピアニストにとりましては、致命的ですね…。

その後、2000年代に「ボトックス療法」によって右手が回復するまで(※ただ、
あるインタビューでは「それでもその療法にも限界があるので、自分が”弾ける”レパートリーを
いつも探す様にしている」とおっしゃっていました…。)、左手だけのレパートリーによって演奏を
続けました。


ヴェベール先生はレッスン中、「フライシャーがよく話していたのだけれどね…音楽というものは…」などと、
よくおっしゃることがあり、私はその度に、ヴェベール先生はフライシャー氏から多くの大切なことを
学ばれ、それらの教えはヴェベール先生のこころ・精神の中に息づいており、また次の世代に伝えて
いくことをご自分の使命のひとつと感じていらっしゃるのだろうな…と思いました。

それから、ヴェベール先生の系譜を知った時に、先生のベートーヴェンへの想い入れが特に
並外れていたことが、腑に落ちた気が致しました…。

私自身は、留学前はどうもしっくり来ずに、「共感」のレベルまで、どうにも到達できなかった、
ベートーヴェンでした(まだまだ、私の感性が未熟だったことによるのですが・・・ショック!)が、
留学中に「開眼させられた…ビックリマーク」と思えるほど、彼自身、彼の作品への想いが劇的に変わった気が致します…。

ジュネーヴ高等音楽院の卒試のプログラムとして選びましたOp.110、その傑作中の傑作を
来る日も来る日も必至で勉強した想い出は、私にとりましては、一生、忘れられない宝物となりました。

ベートーヴェン熟年の頃に作られたこの作品に向かいあっております時、不思議なことに、
「自分の年齢で表現しきれないのではないか・・・」と後ろ向きな気分で前に進めなくなることはなく、
ただただ偉大な芸術作品に対して、「今の自分にできる最善を尽くしていこう…」と
いつも背を押されている様で、幸せな満ち足りた気持ちがいっぱいになり、
この作品(そしてベートーヴェン)は、私をいつもあたたかく励ましつつ、迎え入れてくれる様でした。


修士論文のテーマとしてもこの曲を取り上げましたため、「とにかくベートーヴェンについて、
もっと知りたい」と思い、レッスン・練習の合間を縫い、ヨーロッパ各地のあちらこちら、
彼の足跡を追う旅をし、いろいろと資料を調べておりました。

その過程で、音楽家にとって致命的である難聴にとどまらず、彼が生きた激動の時代背景、
当時の不安な政治情勢と、また今尚、謎に包まれている部分の多い恋愛問題など、
公私様々な苦難に対して、彼がもがき苦しみながらも、何よりも人間としての“善”の意思によって、
それらを乗り越えようと努力し続けた生き様、必死でその人生において自分に何ができるかと自身に
問い続け、その答えをつかもうとした屈指の精神力、内面のプロセスを垣間見、それは実際に手紙の
筆跡や自筆譜などからも痛いほど、ひしひしと感じられました…。

時代・人種・国を越えて、現代におきましても、尚、彼の音楽が世界中の人々に与え続けているもの
の尊さ、偉大さを思いますと、心を揺さぶられずにはいられません…。
(人間としての精神の気高さと、それを象徴する様な彼の音楽を、言葉で表現することは到底
できません…。)

ベートーヴェンを敬愛するきっかけをも与えてくださり(さらにクラシック音楽のすばらしさを深く
感じられることに大きくつながりました・・・)、そして、いつも厳しく妥協を許さないレッスンで
ありながらも、弟子への繊細であたたかい心遣いを忘れないヴェベール先生…。

2年という短い間でしたが、先生のレッスンは魔法の様で、一緒に勉強させていただいた時間は、
あまりに実りの多い学びの時となりました。



また、いつかヴェベール先生のレッスン、ベートーヴェン紀行のことは、別な機会にもう少し詳しく、
書かせていただければと思っております宝石緑



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りんでんピアノ教室講師 あき