初日に視にいきました。

 有名大会社の人事部長・神崎昭夫(大泉洋)は、

妻とは半年も別居中である。

片付かない室内で、夕食に出前のタンタン麺をすする生活だ。

 大学生の娘(永野芽郁)がいるが、講義が面白くないといって

大学を休みがち。

 母親が娘に言う「大会社に就職するか、

そういう会社に勤める人を捕まえて結婚しなさい」という

娘の将来を勝手に方向づける言いざまに反発し、

家を出て祖母・福江(吉永小百合)の家に同居している。

 

 福江は「かんざき」という足袋屋を東京の下町で細々と営んでいる。

そこに、昭夫が訪ねてきた。

 母は以前より明るく活動的になっていた。

聞けば、ボランティアで仲間と一緒に、

ホームレスの人たちに食事や毛布を配っているという。

家には仲間が集まり、にぎやかに活動の談義をする。

 

 その中に教会の牧師をしている男性(寺尾聡)がいた。

福江と彼はお互いに惹かれ合っている。

 二人は一緒に行動し、誰が見ても恋仲である。

 昭夫は実家にも居場所が無いかのような寂しさを覚えた。

 

 昭夫の会社ではリストラや早期退職者のリスト作りが始まっていた。

昭夫の大学の同期で親友である男性が、これに引っかかった。

 おまけに彼は社内で問題を起こしてしまった。

会社としては彼を懲戒免職にしようとしたが、昭夫は自分の首と引き換えに

親友を早期退職者として別会社に再就職できるよう取り計らった。

 

 昭夫は大学時代に好きな女性がいたが、親友もその人が好きで

昭夫にラブレターの代筆を頼んだのだった。そのお蔭で、親友はその女性と結婚した。

 今度も自分が犠牲になって、親友のために行動し、失職したのだった。

昭夫は別居中の妻と正式に離婚した。

 

 住居のマンションを引き払い、実家に戻ると、

母は電気も付けずに暗い部屋でコップ酒をしてる。

 母は失恋したのである。

交際していた彼が北海道の教会に転勤となり、

別れを告げられたのだった。

 

 丁度、お祭りの花火が打ち上がった。

母は「お前が生まれた時も花火が上がった。

世界中の人がお前の誕生を祝福してくれたんだよ」

と。

 忙しすぎる職場からの重圧と、家庭不和から解き放たれた昭夫は、

見失っていたものに気付いた。

新しい親子関係に「こんにちは、母さん」と挨拶した。

 

 足袋屋「かんざき」の客として力士の明生が出演していた。

明生は「明るく生まれる」と書くので、こんなことも伏線になっていたのかと

思う。昭夫は花火に明るく照らされて生まれてきたのだから。

そして、束縛から解き放たれて実家に戻った夜に、

出生時と同じ花火に明るく照らされたのだから。

 

 山田洋次監督作品だけあって、下町の風景や人間関係が

たっぷりと映し出され、そこに登場人物の微妙な心理が絡み合う。

 心の奥に温かいものが流れ込む作品である。