昨日の(夕顔Ⅰ)からの続きです。

 

 右近は、早く姫様に有力なスポンサーを見つけなければ破産してしまうと切羽詰まっていました。

彼女は、10歳ばかりの女童(めのわらわ)を呼んで扇を渡し、源氏と従者が白い花の話をしている所に行かせました。扇には右近が作った歌が書きつけてあります。

 その夜、源氏から返歌が送られました。

 

 惟光は右近から姫の素性を聞き出そうとしますが、なかなか教えて貰えません。

歌のやり取りから10日ほどで、源氏が姫への興味を抱き始めたことを察知した右近は、姫に取り次ぐことを惟光に伝えます。 

 

 初秋になり、源氏は姫を訪ねました。

男女の交際は先ず歌の交換から始まり、御簾越しでの会話、それからベットインという手順になるのですが、源氏はいきなり御簾を払いのけて姫に挑みかかったのでした。

 この時、源氏は扇で顔を隠し、更に白い布で覆面をしていたのです。そんな不審者でも姫はすんなり源氏を受け入れてしまったのです。

 かぐわしい香りがする源氏に耳元で愛の言葉を囁かれれば、ころりといってしまうのも無理はありません。

 

 その夜から源氏は毎夜通いました。姫は素直に源氏に従い、源氏はそんな姫が可愛くてたまりません。

夜明けに姫の家を退出し、夕方にはまた訪れる・・・を繰り返しました。

 姫の性技がよっぽど素晴らしいのか、二人のカラダの相性が良いのかは分かりませんが、とにかく源氏は惚れ込んで惚れ込んで、手放したくないと思うようになりました。

 今まで源氏が関係した女君は受領階級以上の身分でしたが、この姫のように後ろ立てのない低い身分の女君にぞっこんというのも珍しい展開です。

 

 源氏が泊まった8月15日の翌日。源氏はもっとゆっくり姫と楽しみたいと思い、何某の院という管理人しかいない廃院に姫を連れ出しました。

 右近もついて来ましたが、惟光は来ません。何故ならその日、源氏は公務をサボって(無断欠勤して)いるわけですから、出仕しない源氏の尻ぬぐいに追われていたのです。一歩間違えば惟光の首も飛ぶ大失態。

 

 その日、源氏は初めて覆面を取り、姫に素顔を見せます。

終日エッチをむさぼり合った夜。二人が微睡んでいると、髪の長い美しい女人が現れ、「こんな身分の低い女のどこがいいの?私はあなたのお越しをずっと待っているのに」と恨めしそうに言うのです。

源氏がハッとして目覚めると、女は姫に手をかけ引き起こそうとしているのです。その時灯が消えました。

 源氏が誰かを呼ぼうと手を打ち鳴らしましたが誰も現れないので、仕方なく自ら灯を取りに行き、部屋に戻った時、姫はもう冷たくなっていました。ホラーっぽいんです。この場面。

 

 右近も源氏も「死なないでおくれ、死なないで」とおろおろし、泣くするばかり。

グッドタイミングで惟光が現れ、手際良く姫の遺体を薄い布団に包み縄で巻きました。その時布団の隙間から姫の長い髪がするりと滑り出て、それを見た源氏はまた泣いてしまうのです。

 

 惟光は源氏を帰宅させ、遺体は惟光の知り合いの尼がいる東山の寺に運びました。

源氏は姫が忘れられず、そのお寺まで遺体に会いに行くのです。

 その後の源氏は呆けたようになり寝込んでしまいました。一方、右近は源氏付きの女房に就職できたのです。一種の口止め料ですね。

 

 この姫は「夕顔の花」のようにはかなく亡くなりました。源氏の親友であり正妻・葵の上の兄でもある頭中将

に愛されていた時は「常夏」と呼ばれ、生まれた子は「撫子(なでしこ)」と言われました。

この撫子が後に「玉鬘(たまかづら)」となって源氏の養女になります。

(次回は六条の御息所です)