一期一会 | あさの@しょーいち堂オフィシャルブログ

一期一会

去年の秋から稽古が始まったレミング2016も大阪で無事大千穐楽を迎え、打ち上げの翌日タイへ。

演劇仲間の川下智子さんが殺害されて9年目。去年の8月に証拠品を日本でDNA鑑定する事が許され、結果を確認する為の訪タイ。バンコクの在タイ日本国大使館表敬訪問、タイ北部のスコータイ県警本部表敬訪問、ワットサパーンヒンへの慰霊を終え帰国。30°C以上の気温差で体調管理が難しかった。

怒涛のスケジュールも終え、今、東京へ帰る。移動の新幹線内で色々と思い耽る。

レミングでは素晴らしい仲間と戦えた。初演組とは改めて絆が深くなった。総入れ替えとなったメインキャストとの素晴らしい出会いもあった。貴重な宝物だ。

一方、タイでは悔しい思いが沢山あった。
ご両親がインフルエンザの為にドタキャン。これは仕方ないが、日本大使館の対応が一気に変わった。空港への出迎え、大使館への送迎、これら全て僕だけになった瞬間一切無くなった。僕はご両親の代理人の一人に過ぎないのだろう。いくら遺族を代表して来ているのだ、来れない劇団員達を代表して来ているのだ、と言った所で先方には関係の無い話だ。大使館側の第一書記も今回で5人目。それぞれ素晴らしい方々だった。それだけに、今後が心配である。口だけで無く行動で示してくれる人が一番信用出来るのだから。

それに引き換えスコータイの警察官、ボランティア通訳のドクさん達の献身的な姿はどうだろう!これこそ“口だけでは無く行動”だ。他国の遺族に自分ならここまで出来るだろうか?三日間その方々の為に自分のスケジュールを全て犠牲にして尽くす。急な依頼にも対応して公務の車両を出す。などなど数え上げれば枚挙の暇が無い。

「私は偉い人は嫌い。気持で動かない。私達(タイ)はあなた達に迷惑を掛けた。そして今も迷惑を掛けている。8年間も沢山お金を使って(タイに)来ている。だから私達は何でもやる。浅野さん、遠慮しないで。何でも言って」

夕食時にドクさんが言った。温かい心に触れ、これまでの僕たちの戦いが走馬灯の様に流れた。知らぬ間に涙がこぼれ、自分でも驚く程泣けた。嗚咽で喋れなかった。自分の中の閉じ込めていたストレスが一気に噴き出したのだろう。

人生は一期一会だ。

出会って、別れて、別れによって出会って。

ついつい自分の損得で行動してしまいがちだが、そんな物は死ぬ時残らない。気持で取った選択は自分を後悔させず、豊かに導くのだろう。

人生は奥が深い。だけど答えはシンプルだ。