安保法案の採決 「野暮」な日本政治を凝縮した姿だ | Making Our Democracy Work! 石井登志郎オフィシャルブログ Powered by Ameba

安保法案の採決 「野暮」な日本政治を凝縮した姿だ

「あんた、イキだねー!」と言われれば、江戸っ子風に、「イケテルねー、カッコいいねー。」という感じでしょうか。(いきまたは意気とは、江戸における美意識(美的観念)のひとつであった。江戸時代後期に、江戸深川の芸者(辰巳芸者)についていったのがはじまりとされる。身なりや振る舞いが洗練されていて、かっこうよいと感じられること。また、人情に通じていること、遊び方を知っていることなどの意味も含む。出典:wikipedia

「イキ(意気)」の反対は、「野暮(ヤボ)」。「あの人、野暮ったい。」なんて表現を、ファッションなどでたまに使ったりします。意味は「世情に疎く,人情の機微を解さない・こと(さま)。そのような人をもいう。」(出典:三省堂大辞林)要は「イケてない」状態でのこと。

 

ここ数日の国会の混乱状況は、本当に残念です。江戸っ子がみたら、「こりゃ、イキだねー。」とは到底、言える状態ではなく。

 

そもそも、総理があれだけ言っていたホルムズ海峡の機雷除去を、イラン情勢の変化もあったからでしょうか、想定から外したことひとつとってみても、立法事実は弱く、また、憲法解釈を捻じ曲げてこの法案をごり押しするのは、「野暮」以外の何ものでもありません。

 

一方で、確かに、中国の傍若無人とも思える振る舞いや、アメリカ軍の財政面その他制約によって日本独自の力、というか自国防衛にかける責任を示さねばいけない状況にあるのも事実です。今日の平和が、9条によってもたらされたと言うより、日米同盟によってもたらされたという主張も、説得力はあります。しかし、憲法は憲法、法的安定性、立法事実、これらは法治国家の命です。

 

本来は、法案をまとめるのでなく、まずPKO法などハードルの低いものから一つ一つ積み上げて、与野党のコンセンサスを得ながら進めるべき話ではったのではないか。意地になって突き進む自民党政権に対抗し得ない野党も無力ですが、与党内からもっと反対論、抑制論が出て来なかったことは、極めて深刻ですし、連立を組む公明党の責任は甚大です。

 

私がなぜここで、「イキ」と「野暮」を持ち出したか。それは、何が「正」で、何が「誤」か、これはそれぞれの価値観、立ち位置によって変わって来るものです。中国の古いことわざに「一月三舟」とあります。これは、元出雲市長、衆議院議員であった岩国哲人先生のコラムの題名でもありますが、含意は、「一つのものでも、見る者によって違ったように見えること。」です。北に向かう舟から月を見れば、月も北に動いているように見える、東に向かう舟から月を見れば、月も東に動いているように見える。止まっている舟から月を見れば、月も止まって見える。

物の見方が、人によって違うことを受け入れながら、自分とは違う「正義」の価値観があることを受け入れ、そして議論し、違いを埋めながら、修文を重ねてコンセンサスを得るのが、本来の議会の役割です。

 

「野暮」な中でも、各地で沸き起こったデモは、「イキ」だと思います。今まで、デモに行かないような層が動いた、それを実は結構な数の世論が注目をしている、新たなムーブメントであります。もちろん、多くの「プロ市民」が含まれていることも事実ですが、今回はプロ市民ばかりではないことも事実で、こちらの事実の方が重いと思います。この「イキ」な動きの芽を、大きく育てねばなりません。