年始早々ずっと忙しく、ブログを書く時間を取れませんでした。
気が付いたらもう二月・・・。
特殊な庖丁の研ぎ依頼や講習講演などが目白押しで楽しく過ごしておりますが、時間がすぐに過ぎ去ってしまいます。
そんな中でも隙間時間に新しい砥石を試したり、新しい挑戦に向かってまた歩を進めております。
そちらの報告もまたできればと思っています。
さてこちらが本題です。
いつもお世話になっている方から研ぎ依頼がやってきました。
私が研いだ庖丁を使用した感想をいつも教えてくださる方で、鋼材などの特性なども含めとても勉強になっています。
その依頼の中に庖丁に柳刃が入っていました。
その庖丁の鋼材や作者は伏せますが、その鋼材の特徴とは逆の切れ方をする庖丁だとその方は言われるのです。
早速思い当たる節があったので顕微鏡で覗くと、案の定庖丁がボロボロに欠けていました。
欠けている写真↓
通常使用後の庖丁の刃先↓
これは研ぎが悪いのではなく、鋼材と焼き入れの性質だと言えます。
この状態ではよく引っかかって切れるため、ある意味良く切れるのかもしれません。
そこで一度完全に仕上げて顕微鏡で覗いてみました。
一回目の仕上げた写真
かなり真っ直ぐに刃が揃うようにはなったのですが、写真のように割れるような欠けがやはり出るのです。
そこでお客様にどのようにするかを確認させていただいたところ、「減らしてもよいので欠け除去優先でお願いします」とのありがたいお返事をいただきました。
そこで一から研ぎ直し。
ある程度研いで刃先の状態を顕微鏡で見ては研いでの繰り返しで、少し削り込んだところで刃先が揃うようになりました。
数回研ぎ込んでの写真↓
光って見えにくいのはご了承ください。
刃先が揃っているのがお分かりになりますでしょうか。
しかしながら刃先の鋸歯状はまだ粘りがある庖丁に比べると強く感じます。
結果的にはこの刃先で引っ掻くため良く切れますが、切れ味の持続が悪いことが考えられること、食材を傷める可能性が考えられます。
これらの刃先はよく鉋鍛冶が打った新品の状態に見ることができます。
①焼き入れ温度が高い
②硬さが硬い
③鍛造量が多い?(鍛造によって密度が高くなるため焼き入れた時もろくなりやすい?)
いろんな原因が考えられますが、この庖丁の組成が悪いとは決して言えません。
なぜなら私も別の鍛冶屋でこのような傾向を持つ庖丁を打つ鍛冶屋を知っているからです。
その鍛冶屋の刃物はこれより強く欠けを出し、実用に向くのか疑問でした。
しかし昔の刃物はそのような傾向を持つものが多かったとも聞いたため、是非その切れ味などの使用した評価が欲しいとのことで知り合いの大将へ献上しました。
すると予想以上に高評価!!
もちろん初めは良く欠けたのですが、その度に研ぎ減らしていくとしっかり刃線が揃い、顕微鏡での検査では刃先の調子も良くなっていったのです。
現在大将お気に入りの庖丁となっています。
そのようなこともあり、この庖丁が初期の段階はピーキーでも、減って尻上がりに良くなる可能性があると期待しています。
ただこのような庖丁は正直販売側からすると怖いです(^_^;)
またこのような刃先の青紙は白紙に比べて硬さが均一に入りやすいことから、減らしてももしかすると傾向が変わらないかもしれません(-_-;)
研いで使ってを長時間繰り返し吟味しなければいけないと感じる今日この頃です。
もう二月ですが本年もよろしくお願いいたします<m(__)m>