入江陵介  涙の引退表明『やりすぎたね、よくやったと言ってあげたい』…五輪4大会連続出場の34歳、18年の日本代表に節目

  競泳の背泳ぎ男子で五輪に4大会連続で出場した34歳の入江陵介(イトマン東進)が3日、現役引退を表明した。入江は日本競泳最多となる5大会連続五輪出場を目指し3月のパリ五輪代表選考会に臨んだが、100メートル(M)と200Mで落選。この日、都内で引退会見に臨み、『長く競技生活を送ることができて、心から幸せ。パリの地で引退したかったが、最後の引退レースをこの日本、東京の地でたくさんの人の前で泳ぎ切る事ができたのは、何より幸せな時間でした』と語った

 

  2006年のパンパシフィック選手権、当時16歳で初代表入りしてから18年。頭にペットボトルを乗せても落ちることのない『世界一美しいフォーム』を武器に、日本の背泳ぎ界をけん引してきた。18歳で初出場した08年北京五輪では、200Mで5位入賞。12年ロンドン五輪では100M銅メダル、200M銀メダル、メドレーリレー銅メダルの3個のメダルを獲得し、21年東京大会まで4大会連続で五輪に出場。北島康介、松田丈志ら競泳界のレジェンドに並ぶキャリアを歩んで来た

 

  世界に最も近づき、輝きを放ったのが2009年。高速水着問題で世界水連から認定こそされなかったものの、5月の日豪対抗男子200M背泳ぎで、当時の世界記録1分52秒86をマーク。同種目の絶対王者、アーロン・ピアソル(米国)と双璧で世界を争い、同年の世界水泳ローマでは世界記録を上回る1分52秒51で2位。ピアソルに敗れはしたものの、この記録は15年たった今でも不動の日本記録として存在している

 

  近年は世界の表彰台から遠ざかりながらも、日本の背泳ぎの第一人者として後継者の台頭を待った。21年東京五輪は日本代表の主将を務め、昨年の世界選手権(福岡)は前人未到の8大会連続出場。日本選手権では100M、200Mの2種目で最多の10連覇を達成するなど、国内ではトップの実力でパリ五輪にも挑戦していた

 

  だが3月の代表選考会は、100Mは54秒10で派遣標準記録を突破できず、2位でメドレーリレーの代表入りも逃す。ラストチャンスの200Mも1分58秒37の3位に終わり、パリへの望みが絶たれていた。一方で『今回すごく活躍してくれた。この勢いのまま頑張ってほしい』と34歳が期待を寄せた19歳の竹原秀一(東洋大)が、200Mで初めて五輪代表入り。待ちにまった″後継者”の代表入りもあり、入江はレース後『やり残したことはない。やり過ぎちゃったかなと(笑い)』と、すがすがしい表情を見せた

 

  今後は所属のイトマンに籍をおきながら、水泳を教える活動に携わるという。大学院進学も視野に入れており『いろいろな活動をしながら、勉強していけたら』。また、幼い頃からの夢がアナウンサーだったことを明かし『今までは、メディアに伝えてもらう立場。今度は、伝える立場にもなってみたい思いもあります』。会見では、時折言葉につまりながらも『やりすぎたね、よくがんばったね、と言ってあげたい』と、涙ながらに万感の表情で自らをねぎらった入江。第二の人生を、晴れやかに歩み出した