西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

BenFiddichの店名は店主の鹿山博康から由来【Ben】→【山】【Fiddich】→【鹿】
畑を持つ農家バーテンダーであり『Farm to glass』を提唱
日本在来種の自生する草根木皮をもカクテルに変える新しい可能性を模索
アブサン、薬草酒、古酒がゴロゴロ転がるBar

BenFiddich店主の鹿山です。


インドには様々なお酒がある。
サトウキビ、ココナッツの花蜜、米、稗、粟、麦、などを中心にはたまたカシューアップルの果実やタマリンドなどなど...



その中でも特に珍しいのが主にインド中央部で生産が盛んなお花から造られる地酒がある。

マフア(Mahua)の乾燥花




Mahua(マフア)という木の花から花蜜(糖度68%から72%の食用花)より作られる世界的にも稀な素材で造られる蒸留酒。

マフアの木。大きいものは20mを越す



長いインドの歴史の中でイギリス植民地時代の20 世紀初頭に輸入アルコール奨励の為製造を禁止された経緯があるMahua(マフア)酒。



禁止されてた事から長らく世間から忘れ去られた酒類だったが伝統的な農村では嗜好品と神事と両面で脈々と現代まで語り継がれていたお酒。


それが現在では2021年Mahua(マフア)酒をインドの歴史的酒類としてインド政府が宣言。インド政府の庇護の下、Mahua(マフア)酒を復活、普及させる取り組みが行われている。



乾燥させるとこのような形。



新鮮な状態。



なぜ今になって忘れ去れた酒類の
マフア(Mahua)なのか?

マフア(Mahua)を有名にしようとする一人の立役者がいた。元ジャーナリストのJhampan氏だ。




【マフア酒】はインドの法律において
『country liquor』(田舎酒)という枠組みにハマっており国外のみならず、国内の州外に正規で売る事もできないお酒。
(これはこれで文化を守る為の大義がある)

Jhampan氏はその法律を変えようと尽力している人物だ。
その理由はマフア酒が世に知られ州外、国外へ売られるようになれば地域の雇用、繁栄に繋がると考えている。もちろん地域の文化も守りながら。さながらインドの『情熱大陸』に出てきそうなインドの伝統酒復活を掲げる旗振り役キングメーカーにマフア酒探訪に同行させてもらった。


場所はチャッティースガル州というライプルという州都から車で8〜10時間くらい行ったDantewadaという田舎町から車で40分くらい進んだ集落。





近くにはカンガーガッティ国立公園があるジャングル。ジャングル周辺は今でもマオイズム、コミュニズムが住民に強く支持されつい10日前にも30人が銃撃戦で死亡する事件があり革命戦士が活発なスリリングな森。



インド共産党毛沢東主義派(CPI-Maoist)


そんなスリリングな地域にマフア酒(Mahua)が
地域の伝統酒として根付いている。


自分自身は今までインフラ設備がきちんと整った首都デリー、バンガロール、ボンベイ、ゴアなどのいわゆる都会のインドにしか行った事がなかったので初めてのローカルな場所。
そう、とても楽しい



近くの市場にて



様々なストリートフードも売ってる



市場でマフアを売ってるおじさん↑



人によっては葉っぱで飲む


マフアを売ってる人々も売りながら

マフアを呑む自由感。



ここのマフアが売られている市場においてすごいなぁって思ったのはみんなめっちゃアルコールを飲む。マフアがよく飲まれているインド中央部の地域では根ざしているのだろうと。



インドにはカースト制度があった。
いわゆる身分制度でだんだんと薄まってきている文化だろうけど田舎にはまだ根深い。
マフア酒というのは元々は下層民とそれすらもあまり当てはまらない外界から隔たった土民のお酒。だから僕ら外国人にとっては珍しいお酒でもマフア酒が盛んではない州外のインド人にとっては『下層民が飲むお酒』であってあまり印象が良くない。
今まで誰も手を差し伸べなかったから粗悪なマフア酒も横行しているし、造り方も地方色が色々あり過ぎて一枚岩ではない。
また複数の州でも伝統的に作られているのでアメリカ同様インドも州法の独自性が認められるのでマフア酒が禁止の州もあるし、そもそも禁酒法を敷いてる州もある。そんな州の中でも土着の人達は土着信仰の儀式でマフア酒を作ったりするので
それをまとめようとするのは大変だ。
ただ先に述べたマフア酒を世界に発信しようとしているJhampan氏が少しずつ尽力して少しずつだが【マフア酒とは?】のルール造りを政府に働きかけている。



市場にて土器の蒸留器が売られているのでマフア酒造りがとても身近にあるのが伺える。
因みに蒸留器一式300ルピーとバチクソ安い
(500円未満)




ここでマフアはどのように作られるのか?

【発酵】
①乾燥マフア1kgにたいて4ℓの水を加える。
発酵期間は夏の場合、2日目にポットが泡立ち始め、4日目までに蒸留。冬だともう少し長い。
酵母はその辺の酵母で自然発酵。



発酵中のマフア。

②【蒸留】
一回蒸留のみ。
基本的にアルコール度数は25度〜28度。
クレイポット(土器)の蒸留機が安価で広く出回っている。300ルピーで買える(500円くらい)
もしくはステンレス素材。
蒸留器のタイプは兜釜式蒸留となる。


蒸留器の内部↑。受皿があり、そこに冷却路から冷やされたものが溜まり、横の筒に流れる。



上の上部に水を張る。冷却路。
5キロの醪の場合、蒸留約4時間。
冷却路の水は少なくとも5回交換。



こんな感じで横から出てくる


③【味は?】
いくつかの場所でマフア酒(Mahua)を飲ませてもらったが千差万別。
僕ら日本人にとっては形容しがたく香りと味わいは独特だ。グァバや熟れたマンゴー、ジャックフルーツのような味わいと言ったら良いと思う。
僕は大好きだ。





④【今後のマフア酒】
僕らが今回行ったのはチャッティスガル州という場所で作られているマフア酒。
マフア酒を世界へ発信させようと尽力しているJhampan氏は隣のベンガル虎が野生でいる
マディヤ・プラデーシュ州に住んでいる。
Jhampan氏はマディヤ・プラデーシュ州政府に働きかけて二つの場所にマフア酒の製造ライセンスを与え、正規にマフア酒を造る事に成功している。



Mohuloというブランドだ

蒸留製造ライセンスを二つの集落に与えようやく正規に製造できるようにはなったけどまだいくつかのハードルがある。
マフア酒は『country liquor』(田舎酒)という枠組みにハマっており国外のみならず、その州で造られたものは国内の州外に正規で売る事もできない枠組みのお酒になっている。
今はその法律の改正に尽力している。
ただ、流れは良い方向に動いていてJhampan氏以外にも色々なジャーナリストが声を上げ働きかけていて今後変わるかもしれない。
乞うご期待。


⑤【マフア酒カクテル】
マフア酒 30ml
フレッシュオレンジジュース45ml
Rimzim(インドのクミンソーダ)適量



BenFiddichで飲めます


今回関わった日本人チームと
インドチーム



本当に皆様ありがとうございました。
とてもとても楽しいインド中央部旅でした