軽井沢バス転落事故で命を落とされた方々のご冥福と怪我を負った方々のご回復を心からお祈りします。事故原因は究明中ですが、今日はこの事故で浮かび上がってきたひとつの課題について考えたいと思います。

それは「2種免許」についてです。道路交通法第86条には「旅客を運送する目的で運転しようとする者は(中略)第2種免許を受けなければならない」と定められています。要は私的な運転は1種免許、事業として他人の命を預かる運転は2種免許という分類です。
ではこの大切な人の命を預かる2種免許取得者、果たしてその運転技能は常に維持できているといえるでしょうか?

通常、2種免許取得直後、また運転業務を継続しているか直前まで継続しているケースでは、運転技能は維持されていると考えられます。しかし問題は、長年ペーパードライバーで運転していない場合、そして高齢化や病気などによって運転技術が低下しているかもしれないケースです。

実は現行の2種免許制度は、取得時以外では実車して運転技能を確認する義務は一切ないことになっています。わかりやすくいえば2種免許を一度取得したら仮に数年、数十年間と運転未経験であっても、採用されたら
翌日からは大型バスに乗客を乗せて運転が出来るということになります。

これまで普通の良識ある事業者であれば、ブランクや運転技能に不安のある人は採用しないか、再教育してから乗務させるのが一般的だったと思います。
しかしかつての規制緩和以降、旅客運送の業界でも小規模事業者が林立し、さらには近年の訪日外国人の急増でバス需要が増え、運転手不足が叫ばれる時代です。事業者の中には無理な経営の中で、とにかく車体と運転手を確保し走らせ、安全対策や労務管理、車両整備などの法令遵守は後回し、お客様の命を預かるに相応しくない状態で運行するケースが出てきているのではないでしょうか?

2種免許は、あくまで事業として人の命を運ぶ仕事です。ペーパードライバーが翌日からタクシー乗務に従事するのも寒気がしますが、客を乗せた大型バスを運転することを想像すると恐怖を覚えはしないでしょうか?

私は今回、2種免許については、一定期間の運転ブランクがある場合に限り、試験場や教習所での実車再講習を義務付けることを提言したいと思います。

運転ブランクによって生じるのは、単に技能の低下だけではありません。
その間に開発された新車種の操作や機能への適応、新たな交通規範の習熟なども不可欠なはずです。

悲しい大型バス事故が繰り返されています。政府は4年前の関越道ツアーバス事故の際にはツアーバス対策を講じました。今回は貸切バスの事故です。「だから貸切バス事業者の対策をする」という事では対策は常に後追いです。行政、バス事業者、旅行企画会社、運転手、あらゆる立場から道路交通、労働安全、車両整備、などあらゆる観点の事故防止策を検討せねばならぬ時だと思います。

その意味でのあくまで一つの観点として「一定期間の運転ブランクがある2種免許取得者が旅客乗務に従事する場合の、試験場や教習所での実車再講習の義務付け」を提言していきます。