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前回の続きです。
試合を観て感じたことについて。



今回はいつも別日程で開催されてる後期西部日本(スタンダード)とレアード杯(ラテン)が同日開催でした。
今回私たちはお席と撮影権を購入し、正面2列目から観戦。す、すごくよく見える。



引退したらダンスの見方が変わる、ってよく聞きますが、特に今回の西部日本で、ああなるほどと分かってきました。
フロアのすぐそば、たぶん審査員とほぼ同じ位置から目に入ってくる景色は、これまで思っていたものとは見えてくるものがまるで違うのです。



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現役のときは、単にダンスの上手い人が勝つのだと思っていた。パワフルで緩急自在で、高い技術があって…。



でも、最前列からだと、その選手がどれくらい集中しているか、隙があるのか無いのか、何を考えて踊っているのか、どこを見つめているのか、オーラを放っているのか、持つキャラクターがそのポジション(チャンピオンとか、ファイナリストとか)に相応しいのか、どれくらいダンスを愛しているのか、どれくらい人生を賭けているのか、そういったことが恐ろしいほど透けて見えるのです。
たぶん、ジャッジからもそう。



ラテンは、一生懸命踊っていても、目の前で拍手を送っているのに目線が観客席を向かないほど、自分の踊りに集中しすぎてどこ見て踊ってるのかわからない選手は、いたの?ってくらい存在感が消えます。
ところがトップ選手は逆です。ギラギラと観客席に向かってアピールしながら、なおかつ中身も完璧に全力で踊っています。



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以前から、ソロのときはカッコいいのに、試合になるとなんで成績悪いんだろう?と個人的に思っていたラテンの先生が何組かいて、不思議だったんですけど、今回なるほどこういうことかあ〜とよく分かりました。



例えば、普段から親しい選手が目の前で一生懸命踊っていて、拍手を送ろうと思っても、その隣に「俺のダンスを見ろ!」「私を見て!」という“気”をバチバチ放つトップ選手が来たら、そっちに注目し応援し、拍手を送らなければいけない、そんな気にさせられるのです。
上手下手というよりも、「気」です。視線を奪い、チェックを奪うのは、精神力です。



現役選手は、選手目線でのイメージと、実際の成績が、必ずしも一致しないところがあると思います。それがなぜ起きるのか。
例えば、今日のジャッジは不利やな〜と思いながら踊って負けたら、それはジャッジのせいではなく、マイナスオーラがほんの僅かでも身体の節々から出ていて、それが見透かされただけなのかも知れないと、今となっては思います。
それくらい、何考えて踊ってるか、モロバレなんです。



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スタンダードもそうで、単なる技術の上手下手では大差ない感じです。
しかし、自信を持って踊る選手、疲れてるときも最後まで笑顔を絶やさず踊る選手、ものすごく集中してる選手、音楽の流れやLODに沿ったフロアの流れをとらえている選手、余裕や風格のオーラが見える選手はいやでも目に入ってきます。
荒削りでも体いっぱい投げ出して踊る選手も、荒よりもそのポジティブオーラが伝わってきます。



反対に、単に一生懸命踊ってたらいつか評価してくれるみたいなダンスは、全然見えてこないです。
ほんの一瞬でも集中力が切れたり、暗い表情したり、無理な力みが見えたり、パートナーに対して不満があるんだろうなーという表情を一瞬見せたり、男性が右手をゴソゴソ持ちかえるのも、何とまあ思ってた以上に目立つ。



初渡英したときにリチャード・グリーブ先生から「技術はもう十分です、メンタルが大事です」と言われたのだけど、今更ながらやっと真意がわかった感じ。遅いよ〜(; ̄ェ ̄)



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西部日本スタンダードは今回、どの選手もものすごく集中して、ピリピリしているのが分かって、声が掛けづらかった。



今回、優勝経験のある橋本組と浅村組が出場せず、去年のセミファイナル以上のメンバーのうち、引退したのが僕たちと松尾先生、木下先生。そして他団体に移籍した選手が数組。一気にメンバー交代が進んだ感じです。なので皆、大チャンスと思っていたと思います。



西部日本タイトルを、だれが獲っても初優勝。上位の椅子もたくさん空いてる。かといって、先の全日本で若手が飛躍し24以上におおぜい進出、順位の変動も起きている。減ったからってレベルが下がったわけでもない。



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準決勝が終わり、決勝への合否を分けたのは、それこそ単なる上手下手だけでなく、ファイナリストとして相応しい貫禄、自信、存在感、最後まであきらめない気持ち、そういったものが見えたかどうかではないでしょうか。



直近の実績では、全日本や統一戦で上昇気流に乗る清水組がひょっとして一気に来たりするのかなあ?と試合前は思ったりしていたのですが、最後まで笑顔を絶やさずフルパワーの仲秋組、音楽に対する高い集中力を見せる工藤組、そしてまだ脚が万全でないのか、時折苦しそうに顔をしかめながらもなお、ハッとするような華麗なムーブメントを見せる濱田組が、高いエネルギーレベルに感じました。



優勝は工藤組!
あとで内訳を見たら、なんとこれまでに無いような結果に。
というのも、どの審査員も、種目のたびに評価は割れ割れ。本気で悩まれたんだな〜というのが伝わってきます。



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そして、実は工藤組、仲秋組、濱田組の3組が同点!
しかし、スケーティングシステムでより細かい審査内容が精査され、僅差で工藤組が優勝と判断されました。
もしこれがスクリブナー杯のような単科戦方式だったら、「3組同時優勝」だったそうです。



来年のスクリブナーはレアードと同日開催だそうです。どんな熱戦になるのでしょうか。こんな僅差では、次も順位がすんなりそのままとは思えません。
皆さんもぜひ試合観に行ってください。産まれたてのベビーを連れて見にきたいとこですが、飛行機に乗せられるかな…?



それにしても、A級に同じ年に上がってずっと競ってきた工藤組や濱田組が、こうやってトップレベルになっていくのは誇らしい気持ちです。



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ずっと持ち続けていた価値観があります。チャンピオンは1組が上手ければなれる。でも名勝負は1組のチャンピオンだけでは生まれません。お客様が手に汗握るコンペ、今日は誰が勝つだろうとワクワクするコンペができるには、等しく才長けたダンサーがたくさん必要なのです。



敵ではなく、切磋琢磨してともに高みを目指していく環境であることが、もっとも貴重なのです。友と書いてライバルと読む、そんな仲間の存在を大切にしようと、プロになった当初からずっと思っていました。



そんな仲間が試合後送別会を開いてくれました。
本当に素晴らしい仲間に恵まれました。
みんなありがとう。本当にありがとう。



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