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北海道に着いて、早4日経ちました。
大阪での日々が、もう遥か昔のようでもあり。
またひょいと戻れるような気がするほど、ついこないだのような事でもあり。



到着した日は良い天気でしたが、今日は雪が降っています。



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月曜日は、私が旅立った日でもあり、佳奈が念のために早めに入院した日でもありました。
千歳空港から電車に飛び乗り、病室の最寄り駅に着いてホームに降り立ち、階段を駆け上がった瞬間。



突然、カバンにお守りがわりにつけていたキーホルダーが、何かに引っかかったわけでもないのに、パーンと壊れて外れたのです。



これは現役の最後の数年。たまたま見つけて買い、キャリーバックにつけて練習へ、レッスンへ、ロンドンへ一緒に行ってたものでした。



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「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」
90年代に大人気だったバスケ漫画「スラムダンク」…僕ら世代は誰もが夢中になった作品です…で、インターハイで強豪に大差をつけられ絶体絶命のときに、安西監督がチームメンバーに語った有名なセリフです。



湘北高校はそこから20点差をひっくり返し、奇跡の大逆転を起こすのです。
その言葉が書かれたキーホルダーを、プロ現役選手として終わりが近い自分の心の支えとして付けていたのですが、まさかよりによって、このタイミングで壊れるとは…



私はあまり信心深くはないですが、このときは何か運命的なものを感じ、もう、ホントに終わったんだと思いました。



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病院に続く坂道を上がりながら、だんだん涙がにじんできました。



思えば、この一年、なぜかなかなか泣けなかった。
引退表彰のときも、送別会のときも。
これまでの自分だったら、絶対感動して大泣きしているような場面でも、なぜか涙が出てこない。



あ、唯一、H君との御別れの時は涙が止まりませんでしたが。今思い出しても、ずっと胸が痛みます。



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なぜ泣けなくなったのか、思い出す場面があります。



春に妊娠が発覚してから、上本町の産婦人科に二人で通いました。
近所だから帰りは歩きです。



ある日の病室帰り。ニコニコする佳奈の横で、私は常に冷静に
「次の角、車が出てくるかもしれないからよく見て。
ここから歩道狭いから、こっち歩いて。」



「ねえ、嬉しくないの?
どうしてそんなに冷静なの?」



「いや、嬉しいけど、それで頭がほわわ〜ってなって、見落としで交通事故とか嫌やろ?
だから、なんか妙に頭が冴えて、冷静になってんねん。」



そしたら、佳奈は大笑いするんです。



「??
なんで笑うん?」



「いや、だって。
色々あったけど、貴方はやっぱり守谷先生の弟子ね。」



「?」



「先生いつも、良い成績が出てるときこそ一番油断するな、って言ってたじゃない。
ちゃんとしっかり、教えを受け継いでる(笑)」



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そんな緊張状態が、たぶんこの10ヶ月間、ずっと続いていたのだと思います。
そしていざ、病室に入って顔を見た瞬間、二人して涙腺崩壊しました。
この1ヶ月間お互いに離れて頑張って、ずっと気を張っていたものが堰を切ったように、しばらく、ずっと泣いてました。



人生たくさんの転機がありました。たくさんの縁がありました。中には最初に入った会社を辞めたりとか、縁のないものもありました。でも、たくさんの出会いとつながりの結果、今の自分があり、これからの自分があります。



よく、あの頃に戻って、違う選択をしていたら…なんて想像をされたことがあると思います。でも最近思うのは、結局戻ったって、同じ選択をしているような気がするのです。



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お守りのキーホルダーが、新天地に降り立った瞬間に壊れるなんて、きっと運命というものは人智を超えた大きな力で支配されているのだと。
ならば大きな流れに乗った上で、その日その日を、全力で生きていくことが一番幸せへの近道なのではと思います。



出産まではまだ時間がかかりそうですが、何せ仕事がない身分になりましたので、病院の近くに泊まり込んで、毎日お見舞いしながらその日を待ちたいと思います。



それもまた、何と都合よくハマった運命だろうと感嘆せざるを得ません。
皆さま、もう少々お待ちを。