763『ネットワーク』→視聴率こそがTVの命だ | 映画横丁758番地

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生きているうちに一度は(何度でも)観ておきたい映画について、変幻自在・巧拙緻雑・玉石混淆で書いています。

本作の感想からは少し逸れた話題になりますが、かつての日本には、当時のTVに

ついて「一億総白痴化」と揶揄した社会評論家がいました。

そのココロは、

~テレビというメディアは非常に低俗なものであり、テレビばかり見ていると

 人間の想像力や思考力を低下させてしまう~

 

週刊誌に掲載された記事が最初だったようですが、具体的にはこんな文言が

並んだと案内されています。(1957年『週刊東京』)

~テレビに至っては、紙芝居同様、否、紙芝居以下の白痴番組が毎日ずらりと

 列んでいる。

 ラジオ、テレビという最も進歩したマスコミ機関によって、

 『一億白痴化運動』が展開されていると言って好い~ 

 

その社会評論家とは「大宅壮一ノンフィクション賞」、また膨大な蔵書資料を

元にした「大宅壮一文庫」の冠にもなっている大宅壮一(1900-1970年)でした。

ちなみに、大宅が使った言葉は正確には「一億白痴化」でしたが、後に

小説家・松本清張(1909-1992年)によって、これに「総」が加わえられた

「一億総白痴化」の方が定着したとされています。

 

まあ一般的には、一時的な「流行語」として捉えられているようですが、

ドッコイ、昨今のTV番組を眺めてみると、流行語どころか非常に的確な

「予言」だった気もするところです。

 

それはさておき、本作はそのTV業界で「視聴率」という得体の知れない

魔物に翻弄される業界人の姿を描いています。

「視聴率」を稼ぐために様々な知恵を絞るニュースキャスターでしたが、

やがてはその競争のタガが外れることになり、遂には狂気の沙汰にまで・・・

 

映画作品ですから幾分のデフォルメ感が漂ってはいるものの、まさに

「一億総白痴化」の別バージョン版にも感じられること魯です。

 

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「ネットワーク」 1976年 監督:シドニー・ルメット  

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左から)ウィリアム・ホールデン/ロバート・デュヴァル/

    ピーター・フィンチ/フェイ・ダナウェイ/

 

出演陣がこぞって熱演で、この年のアカデミー演技賞を三人も誕生させました。

アカデミー主演女優賞には、

1967年『俺たちに明日はない』(監督:アーサー・ペン/)

で、ギャングのボニー・パーカーを演じて一躍注目を集めたフェイ・ダナウエィ

 

アカデミー主演男優賞には、

1959年『尼僧物語』(監督:フレッド・ジンメマン/)

などの名優ピーター・フィンチ

ちなみに、ノミネート直後にで急死したために、アカデミー賞史上初の

「死後受賞」となりました。

 

さらにはアカデミー助演女優賞に、フィンチと同じ『尼僧物語』にも出演

していたビアトリス・ストレイト

なんでも、出演時間わずか5分40秒でのオスカー受賞は出演時間最短記録

だとされています。

 

1953年『第17捕虜収容所』(監督:ビリー・ワイルダー/)

でアカデミー主演男優賞を獲得したウィリアム・ホールデン

 

1983年『テンダー・マーシー』(監督:ブルース・ベレスフォード/)

で同じくアカデミー主演男優賞に輝いたロバート・デュヴァル

 

さらには、受賞こそ逃したものの、本作でアカデミー助演男優賞に

ノミネートされた名優ネッド・ビーティ

 

監督は、

1957年『十二人の怒れる男』(出演:ヘンリーフォンダ/ほか)

1974年『オリエント急行殺人事件』(出演:アルバート・フィニー/ほか)

シドニー・ルメット

アカデミー監督賞に4度もノミネートルされながら、受賞歴はゼロという

ことで、これは筆者にとっては大いに意外なことでした。

 

アンティークな作品が多くて恐縮至極にございます。

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