本作の感想からは少し逸れた話題になりますが、かつての日本には、当時のTVに
ついて「一億総白痴化」と揶揄した社会評論家がいました。
そのココロは、
~テレビというメディアは非常に低俗なものであり、テレビばかり見ていると
人間の想像力や思考力を低下させてしまう~
週刊誌に掲載された記事が最初だったようですが、具体的にはこんな文言が
並んだと案内されています。(1957年『週刊東京』)
~テレビに至っては、紙芝居同様、否、紙芝居以下の白痴番組が毎日ずらりと
列んでいる。
ラジオ、テレビという最も進歩したマスコミ機関によって、
『一億白痴化運動』が展開されていると言って好い~
その社会評論家とは「大宅壮一ノンフィクション賞」、また膨大な蔵書資料を
元にした「大宅壮一文庫」の冠にもなっている大宅壮一(1900-1970年)でした。
ちなみに、大宅が使った言葉は正確には「一億白痴化」でしたが、後に
小説家・松本清張(1909-1992年)によって、これに「総」が加わえられた
「一億総白痴化」の方が定着したとされています。
まあ一般的には、一時的な「流行語」として捉えられているようですが、
ドッコイ、昨今のTV番組を眺めてみると、流行語どころか非常に的確な
「予言」だった気もするところです。
それはさておき、本作はそのTV業界で「視聴率」という得体の知れない
魔物に翻弄される業界人の姿を描いています。
「視聴率」を稼ぐために様々な知恵を絞るニュースキャスターでしたが、
やがてはその競争のタガが外れることになり、遂には狂気の沙汰にまで・・・
映画作品ですから幾分のデフォルメ感が漂ってはいるものの、まさに
「一億総白痴化」の別バージョン版にも感じられること魯です。
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「ネットワーク」 1976年 監督:シドニー・ルメット
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左から)ウィリアム・ホールデン/ロバート・デュヴァル/
ピーター・フィンチ/フェイ・ダナウェイ/
出演陣がこぞって熱演で、この年のアカデミー演技賞を三人も誕生させました。
アカデミー主演女優賞には、
1967年『俺たちに明日はない』(監督:アーサー・ペン/)
で、ギャングのボニー・パーカーを演じて一躍注目を集めたフェイ・ダナウエィ/
アカデミー主演男優賞には、
1959年『尼僧物語』(監督:フレッド・ジンメマン/)
などの名優ピーター・フィンチ/
ちなみに、ノミネート直後にで急死したために、アカデミー賞史上初の
「死後受賞」となりました。
さらにはアカデミー助演女優賞に、フィンチと同じ『尼僧物語』にも出演
していたビアトリス・ストレイト/
なんでも、出演時間わずか5分40秒でのオスカー受賞は出演時間最短記録
だとされています。
1953年『第17捕虜収容所』(監督:ビリー・ワイルダー/)
でアカデミー主演男優賞を獲得したウィリアム・ホールデン/
1983年『テンダー・マーシー』(監督:ブルース・ベレスフォード/)
で同じくアカデミー主演男優賞に輝いたロバート・デュヴァル/
さらには、受賞こそ逃したものの、本作でアカデミー助演男優賞に
ノミネートされた名優ネッド・ビーティ/
監督は、
1957年『十二人の怒れる男』(出演:ヘンリーフォンダ/ほか)
1974年『オリエント急行殺人事件』(出演:アルバート・フィニー/ほか)
のシドニー・ルメット/
アカデミー監督賞に4度もノミネートルされながら、受賞歴はゼロという
ことで、これは筆者にとっては大いに意外なことでした。
アンティークな作品が多くて恐縮至極にございます。
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