新堂隼人、ピアノ製作者のブログ in ドイツ -40ページ目

Thema: Barock MusikとGoldberg Variationen

今日はBarock-Musik(バロック音楽)について書きたいと思います。

まずバロック音楽は次の3期に分類されます。
①Frühbarock(フリューバロック、初期バロック、1580~1630年)
②Hochbarock(ホッホバロック、中期バロック、1630~1680年)
③Spätbarock(シュペートバロック、後期バロック、1680~1750年)

各期を細かく見ていくと…


①Frühbarock

●様式:中世の教会旋法の使用
●Generalbass(通奏低音)=連続的な番号をつけられたバス声部
●Konzertantes Prinzip(演奏会形式の原則):通奏低音の上に調和しながら共立もしくは対立する一声部
●Erste Opern(最初期のオペラ):Claudio MonteverdiのOrfeoなど
●通奏低音つきの独唱歌曲として書かれたオラトリオ、ミサ曲、受難曲
●代表的な作曲家:Claudio Monteverdi(1567~1643)

②Hochbarock

●様式:イタリアの影響を受ける
●独自のオーケストラの形成:声楽曲(オラトリオ、ミサ曲、受難曲など)から切り離された器楽曲。バイオリン、オーボエなどの楽器が好まれる
●組曲:Allemande, Courante, Sarabante und Gigueの順番が制定された
●独立したオルガン曲:Kammersonate, Kirchensonate
●代表的な作曲家:Heinlich Schütz(1585~1672):初期のドイツ・オペラなど、J.Pachelbel

③Spätbarock

●様式:ヨーロッパの音楽様式の統一
●調性によって教会旋法は失われていく
●12平均律の普及
●声楽曲:ナポリ・オペラ、オラトリオ、受難曲、カンタータなど
 器楽曲:コンサート様式、平均律、組曲など
●代表的な作曲家:イタリア→A.Corelli, A.Scarlatti, A.Vivaldi
             フランス→F.Couperin, J.P.Rameau
             ドイツ→J.S.Bach


おおざっぱに書くとこのようになりますが、先日友人から興味深い話を聞きました。

変奏曲の傑作、J.S.BachのGoldberg Variationen(ゴールドベルク変奏曲)。
最初と最後にアリア、その間に30の変奏があります。ただでさえ長大なこの変奏曲。各アリア、各変奏曲には真ん中と最後に反復記号があります。

つまり繰り返しをしなければ、アリア:AB、第1変奏:AB、第2変奏:AB…と進むのですが、
全て繰り返しをするとアリア:AABB、第1変奏AABB,第2変奏AABBとなり単純に2倍の演奏時間がかかります。

全て楽譜通りに繰り返しをするピアニスト、変奏曲によって繰り返したり、しなかったりするピアニスト、繰り返しを全くしないピアニスト。色々なタイプがありますが、ピアニストのアンドラーシュ・シフによると、全ての繰り返しをするべきだと言うのです。

なぜならこの変奏曲を大きく見ると、(アリアから第15変奏):(第16変奏からアリア)という線対称になっていて、全ての繰り返しをすると、アリアはA:A、B:Bという線対称になります。

この線対称にこだわるべきだと言うのですが、その理由はバロックの建築様式に関係があります。
バロックの建築様式の特徴は、そうなんです。左右対称。

つまりゴールドベルク変奏曲はバロック建築を意図して作曲されたというのがシフの見解でした。

このように覚えた知識が繋がっていく瞬間は気持ちが良いものです。


 


Musikmesse in Frankfurt

陽が長くなってきて春が近づいているのを感じる今日この頃。

3月24日(水)、学校の授業の1日としてFrankfurtのMusikmesseに行ってきたので日記を書きたいと思います。
職業学校のピアノ、オルガン、木・金管楽器の製作者みんなで行ってきました。

朝7時に学校に集合。バスで直接Messeの会場へ。

インターネットに昨年までのMesseの感想が色々書いてありましたが、こういうものは自分の目で見るのが一番!個人的な感想としてはとても楽しかったです。

FrankfurtのMusikmesseと言えば世界最大規模として有名で、楽器はもちろんのこと、楽譜や付属品に至るまで、まさに音楽に関わるものが集まったという印象。


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写真を掲載するとキリがないのですが、入場すると打楽器、ギターのお出迎え。アンプやチューナーなどの備品も充実していて商談をしている方からギター少年まで賑わっていました。



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そして楽譜のフロアもかなり充実していて楽しかったです。写真はEdition Peters(ペータース版)とWiener Urtext Edition(ウィーン原典版)のブース。ヘンレのブースもあって、品ぞろえも豊富でした。


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そしてピアノのコーナーへ。一番上の写真ですが、YAMAHAのブースの広さに驚きました。その中にはBösendorfer(ベーゼンドルファー)のコーナーもありました。

階をあがってヨーロッパ圏のピアノ・ブースへ。写真はイタリアのFazioli(ファツィオリ)、LeipzigのBlüthner(ブリュートナー)。この他にもシンメル、シュタイングレーバー、グロトリアン・シュタインヴェーク、チェコのペトロフなどがありました。スタインウェイ、ベヒシュタインはもう長い間出展していないそうです。


ピアノの各ブース間には仕切りがないので、自分が弾いた音がほとんど分からなかったのが残念でした。大手メーカーが参加していないのはそういう理由もあるのかなと思いましたが、見ているだけでも充分勉強になりました。



Clavichord製作①

先日の日記に書いたClavichord(クラヴィコード)製作についてご紹介したいと思います。職業学校の工場実習で製作しています。


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職業学校の第3ブロック(2009年11、12月)に製作を始めました。上の写真は第4ブロックの始めのもので、これが鍵盤になります。手前の色が濃い木はFurnier(フォニア化粧板)と言って、木を薄く削ったものです。それをにかわで張りました。

写真だと見えづらいのですが、鍵盤の設計図を鉛筆で書いています。




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そして続いて、これが鍵盤を置く台です。左にある少し色が濃く長い木はWaagebalken(ヴァーゲバルケン)と言って材質はブナ。この上に鍵盤の中央が置かれ、天秤でいう支点になります。




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これが最初の2枚の写真をそれぞれ組み合わせたものです。



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それからSeitenwand, Rückwand(ザイテンヴァンド、リュックヴァンド)などの外枠を接着しました。これらも材質はブナです。鍵盤の右側には箱のようなものが出来ます。後でこの部分に響板を張ります。
鍵盤はBandsäge(バンドゼーゲ、帯鋸)という糸鋸(いとのこ)が大きくなったような機械で切り分けました。これがなかなか大変…。Waagebalkenのピンを打ち込むと上の写真のような状態になります。

この後、響板になるFichte(フィヒテ)という柔らかいトウヒ材を張り合わせて、薄く削るのですがそれはまた改めてご紹介したいと思います。