<意識>とは何だろうか (A-18c) | 松野哲也の「がんは誰が治すのか」

松野哲也の「がんは誰が治すのか」

治癒のしくみと 脳の働き

 対称性という概念は、パウリが提唱したニュートリノの発見の他にも、素粒子物理学に多くの発見をもたらしました。

たとえばディラックの方程式 - シュレディンガーの波動方程式を拡張して、スピンが半整数のフェルミオンを記述した方程式 ー  では、2つの相対する解を得ることができます。正のエネルギーの解と、負のエネルギーの解です。負のエネルギーの解に対してディラックは、負のエネルギーの電子で限りなく充たされた海(ディラックの海)に存在する正のエネルギーの「空孔」との解釈を与えましたが、それは陽電子(電子の反物質)であることが後に判明しました。

 物質と反物質は、一部の特性に関しては全く同じでありながら、一部の特性に関しては鏡像対象性を示します。たとえば荷電粒子の反物質は、電荷を逆転させた粒子となる。負に帯電する電子ならば、正の電荷をもつ陽電子がその反物質です。両者は衝突すると対消滅をおこし、電荷を帯びない光子を放出して、その分のエネルギーを失います。

 量子力学では「レプトン数」という保存量が定義されます。電子やニュートリノなどのレプトン(強い核力 — 素粒子同士を結びつけて原子核を形成する ー の影響を受けない素粒子群。影響を受ける陽子や中性子は「ハロドン」と呼ばれる)であれば、レプトン数は1で、その反物質のレプトン数はー1となる。電子と陽電子の対消滅を考えると、電子のレプトン数(+1)と、陽電子(⁻1)を合計すればゼロとなる。これは、放出される光子のレプトン数(光子を含む非レプトンのレプトン数は0)と一致するのです。

 

 

 

 

 

 

 β崩壊をみても、レプトン数の保存則が成り立つのがわかります。

中性子がβ崩壊すると、電子と反ニュートリノ(レプトン数はー1)を放出して陽子になるが、反応前後のレプトン数を計算すると等しくなります。レプトン数は保存されるのです。

 

 

 物質と反物質はレプトン数や電荷が互いに逆になるが、共通する面ももちます。たとえば質量や、重力との作用はいずれも同じなのです。

 

 反物質は実験装置において生成し、閉じ込めることができます。しかし、対となる物質といつでも簡単に反応してしまうため、通常は短い時間しか存在できません。