第282回 患者さんの声を聞くこと | [粒子線治療][陽子線治療][菱川良夫] 名誉センター長のこばなし ~がんから学ぶこと~

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一般社団法人 メディポリス医学研究所
メディポリス国際陽子線治療センター 名誉センター長
菱川良夫による講演からの小話。

先日あった相談を紹介します。

 

相談者は、人間ドックでがんが見つかり、専門の病院を紹介された患者さんです。

 

紹介先の病院を受診しましたが、以前からかかっている先生の方が良いと感じ、

結局、元の病院で投薬による治療を開始しました。

 

治療前に「このがんは転移しているから、薬での治療を行います」と簡単な説明をされ、治療が始まったそうです。

 

しかし『転移』と言われたことが気にかかり、数ヶ月後、こっそりと別の病院で検査を受けました。

 

その結果、『心配ない(薬が著効していた気がします)』ということだったので、主治医の先生に報告したところ、内緒で検査に行ったことを、ひどく怒られたそうです。

 

 

今回の相談は、『陽子線治療が私に適応するかどうかを知りたい』と、また、こっそり来たそうです。 

 

そこでまず「こそこそと違う病院を回るのは、決して得にはなりません。こそこそしないほうが良いですよ」と、アドバイスしました。

 

ただ、今かかっている先生は熱血漢で、紹介状を書いて欲しいと言ったら、また怒られるということなので、次のようにアドバイスをしました。

 

「まず、看護師長さんに自分の気持ちを伝えて、主治医の先生にどのように紹介状を書いてもらえば良いかアドバイスしてもらいましょう」

 

このような時、多くの場合、主治医の先生以上に親身になってくれるのは看護師さんです。

 

同じような境遇にある方は、是非、看護師さんを頼って下さい。

きっと中間的な立場から、あなたに最適な方法を親身になってアドバイスしてくれることでしょう。

 

 

このような話を時間をかけて丁寧にしたところ、ようやく理解していただき、不安も無くなったようなので相談終了となりました。

 

 

当センターでは、患者さんとのコミュニケーションを大切にしています。

そうすることで、言葉にならない気持ちを汲み取ることができ、それらをカンファレンスを通して全スタッフで共有しています。

 

 

患者さんの声を聞くこと。

 

それは、幸せな医療を提供するために最も大切なことだと考えています。