【Cエリア除染】除染求める請願を「趣旨採択」で逃げた伊達市議会~物言えぬ議会への失望 | 民の声新聞

【Cエリア除染】除染求める請願を「趣旨採択」で逃げた伊達市議会~物言えぬ議会への失望

福島県・伊達市議会本会議が16日午前、開かれ、Cエリアの全面除染を求めて市民から出されていた複数の請願について「趣旨採択」した。採択でも不採択でもない玉虫色の決着に、Cエリアに住む母親らは一様に失望する。「Cエリアは安全」と言い続け、頑なに除染を拒む仁志田昇司市長。市議会までもが、市民に寄り添わず市長の顔色を伺っているようでは、移住の難しい母親らは立ちすくむしかない。「気持ちは分かる」では被曝は避けられないことを、市議らはご存じか。



【実現性の面で確信が持てない?】

 伊達市議会は、あいまいで、しかも自分たちの体裁には傷のつかない卑怯な方法を選択した。 

 「趣旨採択」。

 議会事務局によると「『趣旨採択』の定義はないが、地方議会の用語辞典では『請願の趣旨は妥当だが、実現性の面で確信が持てない』と記載されている」という。最近では、今年の9月議会に提出された「『原発再稼働の中止を求める意見書』の提出を求める請願」が趣旨採択とされている。

 Cエリアの全面除染を求める請願は9月に1件、11月に2件、計3件出されたが、全て趣旨採択。総務生活常任委員会の佐藤実委員長は「放射線量が下がっており、全面除染は不要という声も委員会での中ではあった」、「請願を採択すべきという委員は2人しかいなかった」と経過報告。これに対し、高橋一由議員(きょうめい)は「実に残念な議会だ。除染をやれと言えない議会は何なんだ。市民は納得しない」と発言。近藤眞一議員(共産)も「趣旨採択でなく採択するべきだった」と批判した。

 請願では、提出者がそれぞれの想いを「8000ベクレルに近い土壌汚染が見つかった個人宅もある」、「汚染が放置されたままのCエリアでは外部、内部の被曝を懸念し普通の生活を送れずにおります」などと綴っているが、本会議での質疑の中で、佐藤委員長は「低線量被曝など、細かい文言については委員会では審議しなかった」、「細かい文言については審査はしていない」と述べ、高橋議員が「請願を軽微に扱っていることが露呈した」と指摘する場面もあった。

 実は同市議会は2014年7月23日、Cエリアの全面除染に関し、当時の議長名で「住宅除染を希望した世帯の対応を優先して実施すること」など5項目の申し入れを仁志田昇司市長に対して行っている。それから1年以上が経ち、議員たちの考えは大きく後退したのだろう。他県で避難者サポートに従事している女性は「議員さんたちが視察に来た際、『Cエリアも除染してもらわないと帰れない』というお母さんたちの声を聴いていたはずなのに…。その時の議員さんも趣旨採択に賛成して起立しているのを見て驚きました」と傍聴席で残念そうに話した。

 請願を採択して市当局に除染を求めるわけでもなく、不採択して市民の訴えを一蹴するわけでもなく、「気持ちは分かるが…」という玉虫色決着。Cエリアの除染に消極的な仁志田市長はさぞ、満足だったろう。
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市民からの請願を「趣旨採択」とすることに賛成して

起立する議員たち。昨年、議会としてCエリアの除染

加速化などを市に申し入れたが、大きく後退した

=16日、伊達市議会


【地表3μSv/h未満は対象外】

 「気持ちは分かるって言われてもねえ…。目の前にある汚染はどうしてくれるんでしょうか」

 請願が「趣旨採択」となったと知り、Cエリアに暮らす母親らは一様に落胆の色を隠せなかった。

 静岡県内に母子避難した母親は「だまされた」と振り返る。

 「避難先に届く市政だよりには『除染がんばってます』というような事が書かれていて、てっきり、戻ってきたら自宅の除染は終わっているものと思っていました。ところが全く手つかずじゃないですか。場所によりますが、今でも自宅周辺には0.4μSv/hもある場所があります」

 仕事の都合で福島を離れられない夫を残しての母子避難。「伊達市を出る時は『こんなに放射線量が低いのになぜ逃げるんだ』と町内会長に言われました。そのまま移住するのが一番良いのかもしれないけれど、子どもにとっては両親が揃っている方が良いし、経済的な問題もありますし…」。広報紙の文面に託した淡い期待はしかし、残念ながら叶わなかった。
 気の合うママ友たちで集うクリスマス会。走り回り、お絵かきするわが子を見守りながら、別の母親は「今、住んでいる人を大事にしないで、伊達市に未来なんてあるの?」とつぶやいた。

 「私は福島市に住んでいて、山形県内に一時避難していました。戻るにあたって、別の市に転居しないと民間借り上げ住宅として認められない。福島市に戻っては自費で借りないといけないんです。そこで伊達市を選んだのが間違いでした」

 伊達市の除染実施計画第2版では、Cエリアは「年間積算線量が1mSv以上5mSv未満」と定義され、「伊達、保原、梁川など約1万5600世帯」が該当するという。「ホットスポットを中心とした除染を行う」と記載されているが、実際には地上1㎝の高さで3μSv/h以上が計測されないと対象とならない。先の母親は「自宅周辺は0.6μSv/hもあるのに除染の対象とならないんです。一度、市職員が測りに来たけれど、説教でもするように安全性を散々、語って帰って行きました」と憤る。屋根や雨どいの除染を行うことも考えたが、全て自費になってしまうのがネックになる。行政へ除染を求めることは、決してわがままではない。
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伊達市役所周辺には、Cエリアの全面除染を求める

のぼりが立てられている。しかし、仁志田市長は一貫

して「Cエリアは全面除染の必要ない」と拒み続けている


【「必要なのは『心の除染』」】

 2013年から発行されている「だて復興・再生ニュース」。仁志田市長は毎号書いているコラムの中でCエリア除染をたびたび取り上げ、否定的な見方を示し続けている。

「Cエリアにおいては全面除染の必要はなく、いわゆるホットスポットを除去すれば大丈夫」

「基本的に年間5mSv以下であって、放射能被曝対策は迅速であらねばならないことからも、ホットスポットの除去を迅速に行うことが現実的である」

「Cエリアでは、累積被曝線量が概ね1mSv未満であったことを確認しております」

「1㎝の高さで3μSv/hという基準が高すぎるという意見を多数いただいていますが、これも誤解がある」

 さらには、国の示した除染基準0.23μSv/hを「無用な不安を市民に与えている」と批判。「今、必要なのは『心の除染』」などと綴ってきた。

 市は2014年、Cエリア住民の意向調査を実施。同年2月末時点での集計では、回収率がわずか29.2%ながら回答した人のうち68%が「不安」と答え、45%が除染の実施を求めた。しかし、その後も仁志田市長は「(放射能への)過剰な拒否反応は良くありません」、「(市民に)除染の役割に大きな誤解と混乱がある」、「伊達市のように1mSv/年以下の現状から見ると、放射線による健康被害は無視できる程度」などとコラムに記載し続けた。

 さらに「(除染費用は)回りまわれば我々納税者の負担」、「(仮置き場が)確保できずに道端やあちこちに野積み状態にでもなれば、ますます風評被害の原因になる恐れさえある」として、「Cエリアの全面除染は行うべきではありません」、「識者の意見をもとに放射能対策を進めています」と市民の要望を完全拒否しているのが実情だ。
 頑なに除染を拒む仁志田市長。それでもあなたはCエリアに住み続けますか?



(了)