●神尾真由子のアンコール集(CD)2019.07.15. | yukkieのブログ

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 神尾真由子のバイオリンは、コンクールで1位となりTVでそのプライベートな生活がドキュメンタリーになった頃から知っています。当時のチャイコフスキーの協奏曲はまるで鋼のような強さを誇る演奏であり、その豪腕にあっけにとられたものです。

 その数年後、TVでベートーヴェンのソナタを見ました。その豪腕を生かして新しいベートーヴェン像を打ち立てようと苦労したのはわかりましたが、もはやそれは音楽とは言えない曲芸のようなもので、しらけたことを覚えてます。

 今回、図書館で「アンコール集」なるCDを発見したので借りて聞いてみました。ロシア系やラテン系の小品で、技巧を誇るような選曲がされています。26曲も入っていておとくなCDとも言えます。

 一聴して「ハイフェッツだな」と思いました。それぐらい技術的に優れたものばかりです。ハイフェッツよりも高音の美しさが映えますが、逆に低音の美しさは欠けているような気がします。ハイフェッツ編曲のものが多いです。

 しかしハイフェッツという私の言葉は褒め言葉ではありません。ハイフェッツは豪腕でしたし、その演奏には何ともいえないニヒルさとエスプリが同居していて多くの人にまだ「芸」よりは「芸術」を感じさせることが多かったわけですが、今回きいた神尾のCDは「芸」と「技術」だけが聞こえてきて、ジプシーの女芸人としか聞こえてこない瞬間が多すぎます。彼女の心の声が聞こえてこないのです。

 ベートーヴェンを聞いたときにも思ったのですが、神尾はこの路線なのか、これを変更するつもりはないのかということです。だとしたら、商業的には成功している彼女の演奏も、私には縁遠いと思える残念なことです。私は古くはクライスラーやティボーのような温かい演奏、近年ではムターのようなふくよかな、心のこもった演奏が好きですから。

 

 

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