767『ノマドランド』→全裸の水浴シーンが象徴的 | 映画横丁758番地

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生きているうちに一度は(何度でも)観ておきたい映画について、変幻自在・巧拙緻雑・玉石混淆で書いています。

原作はジェシカ・ブルーダー『ノマド:漂流する高齢労働者たち』(2021年)

とされています。

その聞きなれない「ノマド」という言葉は、原義では「遊牧民/放浪者」ほどの

意味になるとのことですが、著者の意図は副題部分「漂流する高齢労働者たち」

に表されています。

 

では、その「高齢労働者たち」はなぜ「漂流」したのでしょうか。

このような説明になっています。

~200年、アメリカの大手証券会社である「リーマンブラザーズ」の破綻に

 端を発する未曽有の経済危機(リーマンショック)が全世界を襲った~

 

その経済危機の影響は広範囲に及びました。

~現役世代だけではなく、リタイア世代にも容赦なく降りかかり、多くの高齢者が

 家を手放すことになった。

 家を失った彼ら彼女らは自家用車で寝泊まりし、働く口を求めて全米各地を

 動き回った~

 

そして、その活動は甘いものではなく、

~専門職での経験があったとしても、それを活かせるような職がほとんどなく、

 安い時給で過酷な肉体労働に従事するほかなかった。

 そんな不安定な状況下でも、彼ら彼女らは自尊心と互助の精神を

 保持し続けていた~

 

そうした彼ら彼女らを「現代のノマド」とでも言うべき存在と捉えたのが本作で、

本作の主人公(彼女)も「現代のノマド」の一人です。

 

臨時教員をやっていたが、工場の閉鎖で街の経済が大打撃を受け、そのあおりで

家を手放す羽目になった彼女でしたが、自家用車に最低限の家財道具を積み込み、

日雇いの職を求めて全米各地を流浪する旅に出ます。

本作は、そうした行動の中で、同じ境遇の人々と交流を深めていく彼女の姿を

通して、「現代のノマド」の実像を描き出していきます。

 

無垢な子供の「おばさんはホームレスなの?」との問いに、

「いいえ、ホームレスではないわ・・・ハウスレスかもね」の言葉のやりとりとか、

あるいは、水の流れに全裸の身体を浮かべるシーンは、ノマド自身の

「心の自由さ・解放感」を象徴した名シーンに感じられました。

 

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「ノマドランド」 2021年 監督:クロエ・ジャオ/  

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 フランシス・マクドーマンド/

 

主人公の女性には、フランシス・マクドーマンド

1996年『ファーゴ』(監督:ジョエル・コーエン/)

2017年『スリービルボード』(監督:マーティン・マクドナー/)

そして本作、延べ三度にわたりAW主演女優賞を獲得した名優です。

 

2005年『グッドナイト&グッドラック』(監督:ジョージ・クルーニー/)

では、AW主演男優賞にニミネートされたデヴィッド・ストラザーン

1994年『激流』(監督:カーティス・ハンソン/)

1995年『黙秘』(監督:テイラー・ハックフォード/)

などでも濃い印象を残しています。

 

そして、この二人を除いては、

~プロの俳優は起用されず、実際に車上生活を送っている人々が起用された

と紹介されています

 

監督は本作でAW作品賞と同監督賞を受賞した中国の女性監督クロエ・ジャオ

が務めましたが、残念ながら他の作品についてはよく知りません。

 

アンティークな作品が多くて恐縮至極にございます。

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