諦めずに「終章」まで読んで意外に感動した。

こういうのホラー小説っていうのかな。スプラッターな部分もかなりあって、死者が蘇って、さらにその蘇った人が次の生贄を探す。町の偉人と殺人鬼が実はこの「蘇り」の人だったという奇想天外な話ではあるが、その原因を郷土史家の書籍から徐々に解き明かしていく風采のあがらない主人公。霊が見える妹。喪失感を共有する高校からの女友達、町おこしのコンサルタントとしてやってきた同じく高校の卒業生など、登場人物はそう多くなく読みやすかった。

いかにもあり得ない話なので逆に安心して読めたがちょっとシンドイところもあり。でもラストがハッピーでそれまでのドンヨリ・モヤモヤが一気に晴れ上がる。

★★★☆☆

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動く屍体、加速する殺戮、そして涙……。
これが、青春ホラーミステリの王道
閉塞感に満ちた田舎町で、大学進学の夢を諦め、父の葬儀社を継いだ遼一。
ある日彼は、遺体が棺から起き上がり、他の遺体をむさぼり喰らうのを目にする。
「死者がよみがえる葬儀社」の噂のせいで客足は激減し、遼一は調査に乗りだすことに。
一方、遼一の妹で高校生の佐紀には、ある秘密があった。それは、霊が見えるということ。
遼一に理解してもらえず、学校でも孤立している佐紀だが、ふと町の変化に気づく。
佐紀は偶然出会った、同じく霊が見える颯太と共に、理由を探り始めるが・・・・・・。

「リング」が強烈すぎてスリラー作家みたいなイメージがついて回るが。こんなドキュメンタリーっぽいものも読みやすくて良かった。過去の海洋事故、現在の海中での生命の危機、過去と現在、交互に話が展開。現在と過去の時空をつなぐのが香水の瓶でこれを狂言回しに、話が進む。エピローグで、ムスタファが島に打ち上げられてからの話が心に沁みた。島の人たちが困難を押し親身になって救助活動に邁進する。友が犠牲になり生き残ったムスタファの心境など。胸に迫った。優輝の再生がヨットでおじいちゃんの加平との交流がほほえましかった。僕の年齢では加平が第二の人生を夢に向かって邁進していく部分に背中を押された。

★★★★☆

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和歌山県串本町のダイビングショップでガイドとして働く女性ダイバー高畑水輝。そのもとを偶然訪れたトルコ人青年ギュスカン。彼の目的はいまから125年前、祖先ムスタファを乗せた軍艦「エルトゥールル号」の遭難現場に潜り、「あるもの」を捜すことにあった。バディとして潜る水輝が一瞬目を離した隙に突然視界から消えたギュスカン…。1世紀の時を経て、日本とトルコの時空を超えて、絡み合う宿命。それは偶然なのか、必然なのか。海の脅威を知り尽くした作家が「知の腕力」で描いた息を呑む渾身の海洋小説!

今週はこれ。初めての「吉本ばなな」、こんな感じなんだね。なんだか「女子」ならではの柔らかな雰囲気がずーーーと最初から最後まで続いて、事故物件マンションに出る花子さんとの交流などあの世とこの世がリンクすり部分もあって不思議で温かい「お話」だった。

恋する人の喪失からに立ち直るのに、なんとも言えない勇気や元気をもらえる。

「あいた隙間には必ずなにかがこうして入ってくる。いつだってそうだ。悪いことの半分はいいことでできている。見つけることができるかどうかだけだ。」

そう気づくのががもっと若い時だったら良かったと思わされる佳品。

船橋に少しでも土地勘があったらさらにさらに面白く読めそう。

★★★★☆

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書店の店長をしている立石花は、15歳の時に、父親が借金を作って夜逃げし、母親は新しく出会った男性と結婚をすることになり、一家離散を体験する。一緒に暮らそうという母親の説得を断り、千葉県の船橋に住む親戚の奈美おばさんのマンションに身を寄せることになるのだが、大好きなお母さんと船橋の駅で別れるときに買ってもらった「梨の妖精 ふなっしー」のぬいぐるみを15年経った今も大切に持っている。
花が奈美おばさんのマンションで暮らすようになって間もなく、小さな女の子が出てくる不思議な夢を繰り返し見るようになる。その夢の中の女の子もまた、「梨の妖精 ふなっしー」を愛するひとりだった。花はいつも「温かいミルクティーを飲んだ」ような優しい気持ちになって目が覚めるのだった。
悲しい出来事があって泣きながら寝た夜のことだった、いつもの少女が夢に出てきて、花に頼みごとをする。それは「自分が住んでいた庭にある桐の木の下に埋めたものを掘り起こして、お父さんに渡してほしい」というものだった。
夢から覚めた花は、奈美おばさんに、この不思議な夢のことを告白すると、過去にこの部屋でおきた出来事を教えられる。そして、夢の中に出てくる少女との約束を果たそうと決意するのだが……。

全編重たくて陰鬱なんだけど一気に読んだ。登場人物が少ないので「この男が怪しいんじゃない?」ってのが最後に「そういう形できたか!」なんだけど、恩人に恩を仇で返すような主人公向井があまり好きにはなれずに寄り添って読めないのが辛いけど、期限まで約束どおり殺すことが出来るのか、誰が伸子の意思を受け継いで指示しているのかが興味深く、先が気になってしょうがなかった。

内容は新しい人生を手に入れる為に交わした恐ろしい「約束」。その実行を促す手紙に衝撃を受ける主人公向井は大切な家族を守る為にどんどん追いつめられていく。「一度罪を犯した人間は幸せになってはいけませんか。」向井の生い立ちにはやるせないものがある、だがそれは何の関係もない人間に危害を加える理由にはならない。犯罪被害者のありようも考えさせられた。公平がいたことに救われた。

★★☆☆☆

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一度罪を犯したら、人はやり直すことはできないのだろうかーー。罪とは何か、償いとは何かを問いかける究極の長編ミステリー。
捨てたはずの過去から届いた一通の手紙が、
封印した私の記憶を甦らせるーー。十五年前、アルバイト先の客だった落合に誘われ、レストランバーの共同経営者となった向井。信用できる相棒と築き上げた自分の城。愛する妻と娘との、つつましくも穏やかな生活。だが、一通の手紙が、かつて封印した記憶を甦らせようとしていた。「あの男たちは刑務所から出ています」。便箋には、それだけが書かれていた。


 

これはスゴイ!最後の5ページを電車の中で読んではいけない。

うっかり読み進めていくと「あの人、なんか泣いてるみたい」といぶかしがられること間違いなし。序盤は軽いタッチでさくさく進むが、恵の復讐かと思いきや、えっ、DJで話していた内容が実は、結末の異なる実話だったわけ!というように伏線の張り方が最後のほうにわかってきて、さらにさらに最後の種明かしに泣かされた。

奥多摩山中での「後藤」との対峙あたりから徐々に高まる期待感が最後に違う形で爆発する。すごいモノガタリだった。

「たとえ目に見えない透明な世界だったとしても、本気で願えば、人はそれに触れることができる。両足で立つことができる。僕はそう信じていた。」

傷ついた人たちがどう傷から立ち直ることができるのか、楽しく読めて考えさせられもした。

★★★★★

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ラジオのパーソナリティの恭太郎は、冴えない容姿と“特殊”な声の持ち主。今夜も、いきつけのバー「if」で仲間たちと過ごすだけの毎日を、楽しくて面白おかしい話につくり変えてリスナーに届ける。恭太郎が「if」で不審な音を耳にしたある雨の日、びしょ濡れの美女が店に迷い込んできた。ひょんなことから彼女の企てた殺害計画に参加することになる彼らだが―。陽気な物語に隠された、優しい嘘。驚きと感動のラストが心ふるわす―。

9人目の犯人は誰なのか?が知りたくてなんだか気味が悪いのに先を読まずにいられない、

連続殺人の罪で収監中の“榛村大和”。彼を知る様々な人物からの聞き取りによってその真の姿が徐々に浮き彫りになり、主人公にもやがてある歪な変化がもたらされてゆく。

歪んだ家庭環境や子供への虐待が将来的に脳や精神に与える影響の恐ろしさや、心の隙に入り込み人の精神を思い通りに操るマインドコントロールの恐怖が、執拗に描かれる。

ラストにホッとしたのに、エピローグでまたまた落とされる。

拠り所を求めすぎる、強く依存するという精神状態が「洗脳」への道なのかもしれない。

みんなが幸せだと思うようなのが宗教で、そうでないなら・・・。

“鎖に繋がれた犬”このタイトルがそういうことだったのかと納得する。 心も体も元気なときに読まないとちょっと影響される怪しげなモノガタリだった。

★★★★☆

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鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人犯・榛村大和からのものだった。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」そう訴える大和のため、事件の再調査を決めた雅也。パン屋の店主だった大和の人生に潜む負の連鎖を知るうち、雅也は大和に魅せられ始める。一つ一つの選択が明らかにしていく残酷な真実とは?俊英が描く傑作ミステリ登場。

これはメチャクチャ面白かった。図書館に予約していたことを忘れていたが、ついに回ってきた。

それぞれの人生の中で負債を背負いこんでしまった少年野球仲間の男二人が再会を果たし、陰謀渦巻く世界に立ち向かう。

蔵王に墜落したB29、そして死病の発生源として封鎖された沼、お蔵入りになった戦隊ヒーロー、そうした偽史的、陰謀論的な仕掛けが絡み合って語られる物語にぐいぐい引き込まれ次はどうなる?が気になって一気に読んだ。

何一つ無駄の無いエピ、細かいディテール描写が伏線として機能し始める後半が特に面白い。 桃沢瞳がカッコイイ、でも最後はそうなるの???だったけど、ポンセの存在もいいし、ドキドキ・ハラハラなエンタメ小説、楽しかった。

もし仙台や山形に土地勘があったなら10倍楽しかっただろうなあと思うところが唯一残念だった。

★★★★★

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人生に大逆転はあるのか?
小学生のとき、同じ野球チームだった二人の男。
二十代後半で再会し、一攫千金のチャンスにめぐり合った彼らは、それぞれの人生を賭けて、世界を揺るがす危険な謎に迫っていく。
東京大空襲の夜、東北の蔵王に墜落したB29と、
公開中止になった幻の映画。そして、迫りくる冷酷非情な破壊者。
すべての謎に答えが出たとき、動き始めたものとは――
現代を代表する人気作家ふたりが、
自らの持てる着想、技術をすべて詰め込んだエンターテイメント大作。

 

今週はコレ。期待しなかったけどスゴく面白くてスイスイ読めた。バイオレンス系で最初はムムッやりすぎかな?と思ったが、どんどん引き込まれていった。

伏線の張り方が巧みで、無駄な会話などなし。人生を病で終わろうとする主人公の会話は意外に深くて会話の伏線や登場人物の存在意義がよく出来ているし登場人物の描き方がみんな魅力的。、ラストの対決シーンはゾクゾクした。

映画になりそうな筋だが、果たして映画化は?

★★★★☆!

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大学に入学してすぐに知り合った南部と門脇は、互いの一風変わった正義感に意気投合した。だが、行きつけの居酒屋で巻き込まれたトラブルが原因で、南部の彼女がいたぶられ死ぬ。しかも二人に突きつけられたのは、その様子を収めた映像をばらまくという脅しだった。一度は屈服せざるを得なかった彼らは、いつか復讐をと願いながら、悪事に手を染めていく。だが、門脇には不治の病による死期が迫っていた…。横溝賞作家、渾身の社会派エンタメ!!

 

2週間かかった!行方不明になっていた女性の死。薬で逃避しようとしていた、男の記憶の中にひそんでいた魔物。ってところで「薬」や「夢」がちょっとわかりにくくてその部分を読み飛ばしても全く平気だった。筋は生まれ育った寒村で起こる不可解な出来事と次第に明らかになる過去の真実。狭いムラ社会の中の、息苦しさと圧迫感、愛する者のため、誰もが少しずつ思い違いをし、連鎖してゆく哀しい罪。という感じで、方言の部分は、読み辛かったけど、中盤からラストにかけての、伏線の回収は見事で、読み応えたっぷりのミステリーでしたが、犯人は君だ!的なノリは期待しないで、だいたいアイツが絡んでいるんだろうなぁというのはきっと読者誰しもが思うに違いない筋立て。 リアリティにはちょっと欠けるけど「昭和の田舎」が堪能できる。

★★★★☆

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真実は「悪夢」の中に隠されている――。幻惑の極致が待ち受ける道尾ミステリーの頂点! あの女が、私の眼前で死んだ。かつて父親が犯した殺人に関わり、行方不明だった女が、今になってなぜ……真相を求めて信州の寒村を訪ねた私を次々に襲う異様な出来事。はたして、誰が誰を殺したのか? 薬物、写真、昆虫、地下水路など多彩な道具立てを駆使したトリックで驚愕の世界に誘う、待望の書下ろし超本格ミステリー!

今年のNO.1になるかも知れない小説らしい小説。よくこんなことが考えられるなあという設定に、静謐で耽美な文章、どこかしらに必ずうならせる文章があり、『人間の存在=他者との記憶の共有』という真理を紡いでいく。だが根底にある喪失感はずっと変わらない。ら物語の底で静かに流れる哀しみがラストでは解き放たれてホッとする。現代版「浦島太郎」の逆バージョンという感じかな。お薦めです。

★★★★★

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宇宙飛行士・甘南備俊介は、木星衛星探査船でのミッション中、太陽面爆発による事故に遭遇する。事故時に人工冬眠に入っていたため、58年9ヵ月後に奇跡的に救出され、地球に生還した。姿かたちは出発時の33歳のままだが、記憶は断片的にしかなく、愛する妻・葵はすでに他界していた。担当医務官、橘ムラサキが彼の復帰を助けるが、訓練が進むうち、甘南備は橘の不思議な挙動に気付く。彼女はいったい何者なのか―。