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[粒子線治療][陽子線治療][菱川良夫] 名誉センター長のこばなし ~がんから学ぶこと~

一般社団法人 メディポリス医学研究所
メディポリス国際陽子線治療センター 名誉センター長
菱川良夫による講演からの小話。

年に1回、指宿図書館で出前講座と称して、無料の講演会を行っています。

 

例年、部屋の大きさの関係で定員を30名としていたのですが、今回は応募者多数となり、断りきれず30名を超えての講座となりました。

なかには2年連続で聞きに来られた方や、センターで治療を受けられた方も見受けられました。

 

熱心に聞いてくださる方が多く、小さな部屋は熱気に満ちていました。

 

 

図書館長さんは女性で、我々のセンターのことをよく理解して下さっており、

「地元が応援しなければ」という強い気持ちを持って、センターを応援して下さっています。

 

兵庫県立粒子線医療センターで院長をしていた時代も、地元の老人会、婦人会、近隣病院の院長などから応援してもらっていました。

 

「地元の人間が応援しなければ、最先端の医療は育たない」

ある病院の院長が、会うたびに口にして下さっていた言葉が印象的です。

 

 

講座終了後の質疑応答では、皆さん遠慮してか、具体的な質問が出ませんでしたが…

質疑応答も終了した後、数名の方が私の元にきて、自分自身やご家族のがんについて具体的な質問をして下さいました。

 

私を信頼してご質問して下さったわけですから、私も一人一人に一生懸命、丁寧にアドバイスさせていただきました。

 

 

地元の応援を受けるセンターとして、応援してくださる全ての方の期待に応えるべく、これからも丁寧で、優しい治療を心がけてまいります。

 

「幸せな医療の提供」の第一歩は、色々な方の声を聞くこと。

これからも、このような機会、講座を大切にしていきたいと思っています。

 

また、「我々の元でも講座をして欲しい」という方がいらっしゃいましたら、遠慮なくお声がけください。

http://medipolis-ptrc.org/center/approach/seminar/

先日、立て続けに、センターから遠方にお住いの患者さんのセカンドオピニオンを受けました。

いずれもホームページを調べ、私の元にたどり着いたそうです。

 

講演でも言っているのですが、最近の患者さんの傾向が以前と大きく変わってきているように感じます。

ご本人、ご家族みんなで、その病院で行われている医療を隅々までインターネットで調べてから、セカンドオピニオンに来られる方が増えました。

 

 

最近の懇話会では、一生懸命私が話すことをメモしている方がいました。

話が終了して、質疑応答の時間になり、その方が質問されました。

 

「日進月歩の医療の中でどのように新しいがん治療法を知ったら良いのでしょうか」

 

 

これに対して、私は次のように回答しました。

 

「がん患者さんは真面目な人が多く、よく勉強されます。

 しかし、最も大切なことは『知識を得ること』ではなく、

 何か自分の体に変化が現れた時に、『どこに相談しに行けば良いかを知ること』です。

 インターネット上には、そのような情報が沢山あります」。

 

 

2歳の孫娘が、iPadをしている姿を見て、この子達が大きくなった時の社会が想像できません。すごい時代です。

 

 

情報化社会とは「情報が諸資源と同等の価値を有し、それらを中心として機能する社会」と定義されているようですが、医療においても「情報が残された命の長さを決める」と言っても過言ではないかもしれません。

 

「どこを知っているか?」 「誰を知っているか?」

 

 

昨今は、真贋見分けのつかない情報が溢れ、何が正しいのか判断が難しい情報社会です。

 

そんな社会の中で、私はこれからも自分の持つ、自分の正しいと思う情報を発信し続けていきたいと思っています。

 

正しい情報を発信し、それを得た人が一人でも多く幸せになってほしい。

これからも幸せな医療を、インターネット技術を使い世界中に発信していきます。

 

当センターでは、キャンサーボード(がんの治療に携わる専門家同士のカンファレンス)を毎週行っています。

 

第268回 新たな試み:キャンサーボード
http://ameblo.jp/ptrc/entry-12196839114.html


先日行われたキャンサーボードでは「前立腺がん」の患者さんが際立って多く、不思議に感じていました。
その理由を調べると、「センターで治療を受けた患者さんからの紹介が多い」ということがわかりました。

 

治療を受けた患者さんの兄弟や友人たちということです。

 


センター開設当初から「幸せな医療の提供」をビジョンに掲げ、「とにかく、丁寧な医療をすること」をスタッフに伝え、全員で実践してきました。
その結果、私たちの気持ちが治療を受けた患者さんに伝わり、ご紹介に繋がっているのだと思います。


がんが治り、QOL(生活の質)も維持されるのが陽子線治療の特徴です。

 

センターでは、これからも、一人一人の患者さんを丁寧に治療しながら、幸せな医療を提供し続けたいと思っています。

 

また、この身体にも心にも優しい陽子線治療と、正しいがん治療の選び方を多くの人に知っていただくため、これからも講演活動で世界中を飛び回ります。

診察や懇話会で患者さんとお話を通して、研究のヒントを得ることがあります。

今回も、ヒントをいただいたのでご紹介します。

 

遠方から治療に来られている患者さんの多くは、センターに隣接しているホテルに滞在しながら治療を受けられています。

今回、このホテルに滞在していた患者さんから、「指宿市内の砂むし温泉に興味があります。どのように入れば良いですか?」と質問を受けました。

 

入浴料がだいたい1000円なので、元を取り返そうと長時間入り、その後体調を崩した方を何度も見てきました。

そこで「欲張って、あまり長時間入ってはいけませんよ」とアドバイスしました。

 

 

それから少しして「がん患者さんの砂むし温泉(4月にホテル内にも完備)の入り方は、普通の人とは違うのではないか?」「これは研究のテーマになるのではないか?」と考えるようになりました。

 

とにかく、思いつくとすぐ実行したくなる性分です。

早速、鹿児島大学の後輩の教授に相談したところ、非常にユニークな研究になりそうだと興味を持ってくれました。

 

 

砂むし温泉が、がん患者さんにどのような影響を与えるか。

その結果から、どのように利用するのが最適か。

 

近々、そんな研究が始まります。

 

 

大地のエネルギーが湧き出る鹿児島県にある、がん治療施設の特権です。

おぼろげながらに、がん治療に効くと考えてきましたが、今回の研究によりそれを実証し、さらに体に優しい治療につなげていきたいと思っています。

 

 

また一つ楽しみが増えました。

結果が出たら、ここでまた報告します。

先日、日本で発刊されている外国人向け英文誌の取材を受けました。

取材クルーは、日本人のディレクターとカメラマン、英国人記者の3名です。

 

昨年も同様の取材を受けたため、今回はディレクターから「この一年間の変化」について質問されました。

 

まず、JCIの認証を更新できたことを報告しました。

 

第275回 JCI再認証

http://ameblo.jp/ptrc/entry-12212406700.html

 

 

そして、昨年の4月から小児がんに対する陽子線治療が保険適用されることとなり、一年間で2名の小児がんの患者さんを治療したことを報告しました。

うち1名は先日のこばなしでご紹介した中国人の男の子です。

 

第290回 60羽の折鶴

http://ameblo.jp/ptrc/entry-12245061295.html

 

このエピソードも、ディレクターに紹介させていただきました。

 

 

当センターでは、目には見えない、数字には現れない部分にも力を入れています。

それが「『おもてなし』で人を喜ばせる」ということです。

 

先日の中国人の患者さん親子に対する指宿観光は、まさに これです。

 

一見、治療には関係のないことかもしれません。

しかし、病だけを治すことが私たちの目的ではありません。

 

私たちは、病を治すだけにとどまらず、人間として関わります。

名前を呼ぶことや、挨拶、コミュニケーションを重視しています。

治療の技術を研鑽するだけではなく、人を喜ばせる感性も磨き続けています。

 

それらは、全て患者さんの幸せに、そして自分たちのやり甲斐と幸せに繋がっていくことを知っているからです。

 

 

人間は感情の生き物です。

目には見えませんが、「幸福」と感じる気持ちや、心からの笑顔は、がんの治療に良い作用を与えると信じています。

 

 

 

引き続き、「おもてなし」を大切にしながら、幸せな医療を提供して参ります。

大地のエネルギーがあふれる南薩・指宿。

センターにはいつも笑顔があふれています。

 

 

男の子とお母さんが折った折鶴を受付に飾っています。

この折鶴が、また次の患者さんを笑顔にしています。